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  12月5・20日合併号社説
 

「家族の宗教」の再生を

 今、「ニート」という言葉が話題になっている。ニートとは「職に就いておらず、学校などに通ってもおらず、そして就労に向けた具体的な動きをしていない」若者を指す。一九九九年にイギリスの内閣府が、十六歳から十八歳の青年の9%、十六万強が毎年ニートになっていると報じたことから、その存在が広く知られるようになった。ちなみに厚生労働省は、わが国のニートを五十二万人と算出している。
 
 人間関係の壁
 共著で『ニート』(幻冬舎)を著した、東京大学助教授の玄田有史氏(労働経済学)はニートが働けない理由について、失業などの経済環境を挙げた上で、次のように述べている。「むしろ、本当に立ちはだかる壁は、人間関係にある。職を探さないのは、『求職活動の仕方がわからないから』という場合もあるが、主な理由じゃない。ニートが働けない背景として、深刻なのは『わからない』という情報の欠如より、職場で『うまくやっていけそうもない』という働く自分に対する自信の欠如なのだ」
 そして、ニートになる芽は学生時代、とりわけ十四歳前後がポイントで、その頃までに親しい友人ができるなど社会的な人間関係が築けないと、高校、大学を卒業しても、社会に出てからつまずき、ニートになってしまうという。少子化時代に、しかも核家族で育つ子供たちは、まず兄弟の中でもまれる経験が少ない。ゲームやテレビなどの影響で独り遊びが増え、地域や学校で、異年齢の子供たちが一緒に遊ぶことも少なくなった。親たちもそうした育ち方をしてきているので、子供がそんな状況にあっても不幸だとは感じていない。
 統計数理研究所が行っている国民性の調査で、戦後六十年で最も顕著な変化は、あらゆる分野における個人主義の蔓延(まんえん)だという。そうした社会や家庭で、人間関係を体験的に学べなかった子供たちが、自立期を迎えても友達をつくれず、やがて引きこもりやニートになってしまう危険性は、十分推測できる。
 こうした人間の孤立した関係を回復する一つの手だてが「家族の宗教」にある。伝統的な日本の家庭では、祖父母や母は何より祈る人で、その信仰が家族を宗教的な雰囲気で包んでいた。子供はその中で育つことで、家族という関係がそれを超えた存在によって支えられていることを覚えていった。
 人間は個として向かい合うと、たとえ家族でも対立関係の部分が多い。ところが、互いに個を超えた存在を意識すると、不思議とその対立が相対化されてくる。対話や相互理解には、よく「相手と同じ目線で見る」ことが必要だと言われるが、それよりも「両者を超えた立場から見る」と言うほうが、より正しいのではないか。
 自分を超えた存在の眼差しを感じながら暮らすことが、絶望的な孤独に陥ることから私たちを守ってくれる。そうしたセンスは宗教文化のある家庭で育つことで、自然に身に付くものである。その意味で、家庭崩壊が叫ばれて久しいが、家庭が崩壊する前に、家庭の宗教が失われていたことに注目すべきであろう。
 
 宗教の側の責任
 そうした家族の宗教が失われたのは、近代化、都市化、個人化によるものと説明されるが、宗教の側の問題もある。人の心は常に変化するダイナミックなものであるのに、その心の習慣を習俗として形式化してしまったことだ。
 心の中には古代から現代までが層を成しており、しかも周りの影響を受けながら、未来に向かって変わろうとしている。そんな人々の生きた心に対応する努力を怠ると、宗教はたちまち単なる束縛、迷信と感じられ、顧みられなくなる。家族の宗教といっても、不断の努力と革新によって維持されるものであることを忘れてはならない。

クョスコニョ    [1] 
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