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  6月20日号[天地]
 

紀州・道成寺は安珍・清姫の物語で知られる。修行僧・安珍が熊野詣での途中、庄屋の娘・清姫に思いをかけられた。安珍は再会を約しながらそれを破り、大蛇に変身した清姫に追われる。安珍は道成寺に逃げ込み、釣鐘の中に隠れる。大蛇は鐘もろとも安珍を焼き殺し、自分も入り江に身を投げて死ぬ

▼これには後日譚がある。数百年後、焼けてしまった釣鐘を造り直した。完成した鐘の供養の日に、美しい白拍子が舞を奉納したいとやってきた。ところが、それは清姫の怨霊。南無観世音菩薩を唱える僧たちと、激しい祈祷合戦となる。やがて敗れた清姫の怨霊は大蛇となり、再び日高川に身を投げた。ところが後日、増上寺の夢に現れた安珍と清姫は、観世音菩薩の功徳によって救われ、天上界で一緒に暮らしていると告げる。ハッピーエンドだったのだ

▼女性が蛇に変身する話は韓国にもある。新羅の僧・義湘は唐に渡って真の仏法を修めようとした。唐の港にたどり着いた義湘は、物乞いした豪邸で娘・善妙にめぐり会う。ひと目で恋心を抱いた善妙は、思いを義湘に告げる。しかし、義湘はそれをかわし、長安で仏教を修め、帰国の途に就く。浜辺から義湘の船を見て嘆き悲しむ善妙はたちまち巨大な龍に変わり、義湘の船をその背中に乗せて新羅まで送り届けた。その後も、浮石山寺の僧を追い出して義湘を招き入れるなど、守り神として義湘を助けたという

▼川村湊さんは、これらの話には「女人往生」の願いが込められていると言うが、それ以上に女性の情の深さを感じさせる。その情と響き合う信仰が、一方の男性には求められているように思う。

クョスコニョ    [1] 
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