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  平成17年3月20日号社説
 

都会と地方の新しい在り方を

 映画『村の写真集』の試写会を見て、同じ徳島県の一宇村を思い出した。剣山の北に広がる村で、典型的な過疎の地。林業が振るわなくなった今、村の経済は公共工事に依存している。山腹に点在する家の中には、自動車で乗り付けられないものも多く、車道から家まで小型エンジンで動く林業用のモノレールが設置されていた。ところが、その操作ができない高齢者が増えている。村長は、「すべての家に車が入れるようにするのが目標だ」と語っていた。
 一宇村に行ったのは、週刊誌に「巨樹の里」として紹介されていたから。日本一のエノキをはじめアカマツ、トチなどの大木がある。年配の「巨樹の案内人」と歩くと、巨樹とかかわって生きてきた人々の暮らしを聞くことができる。そんなエコツーリズムに訪れる都会人も増えているという。
 
スローフード
 過疎地の活性化で参考になるのは、イタリアで始まったスローフード運動だ。食環境ジャーナリストの金丸弘美さんは、「スローフードとは要するにマーケティングだ」と言う。
 イタリア北部のバローロ地方の貧しいブドウ生産農家は後継者も少なく、ブドウは業者に買い叩かれていた。そうした状況から脱却しようと、ワインの醸造・直売を始めた農家があった。それに地元のワイン愛好家たちが協力し、品質の向上を目指したのがスローフード運動の始まりだ。スローフード協会が発足したのは一九八六年。同年、ローマにマクドナルドが進出したので、ファストフードに対抗して「スローフード」と名付けられた。
 農家に情報を与えることで、商品力のある農産物や食品を作るのが活動の中心で、高品質のワインや野菜の生産で農家に経済力を持たせた。
 例えば、多くのジャーナリストやワイン愛好家を地元に呼び、ブドウの種類から醸造法、ビンのラベルのデザインまでアドバイスを受けた。また、ワイン農家や郷土料理のレストランのガイドブックを作って観光客を集め、ワインや特産品を売り出した。今ではイタリア最大の食品フェアを開催するようになり、昨年は大学までオープンして、世界から学生が集まっているという。
 日本では、スローフードを無農薬栽培や地産地消の意味にとらえがちだが、メーンは商品開発とプロモーション。一番力を入れているのは宣伝や集客、イベント、消費者教育、そして農家に対するアドバイスだ。自治体や入場者からはお金を取り、それによって運営する。スローフード協会には専従スタッフが百人以上おり、地元の雇用にも貢献している。

田舎の再発見を
 『村の写真集』ではそうした村おこし的な部分は描かれていなかったが、人々の暮らしが成り立つためには、地域経済を維持・発展させるしかない。それには、多くの消費者のいる都会に向け、都会人の興味を引くような情報を発信するのが重要になる。
 同じ徳島県の上勝町では、高級料亭で使う刺身のつまを出荷し、大きな売り上げを得ている。素材は山から取ってくるので材料費はただ同然。四季を通して出荷できるのが、山里ならではの強みだ。
 剣山の南にある高知県馬路村は、特産のユズを使ったぽん酢醤油やジュースなどの商品開発と市場開拓で全国に知られている。東京・吉祥寺には高知県のアンテナショップがあり、結構にぎわっている。
 インターネットを使えば、それほど経費をかけずに世界に情報発信ができるし、商品の運送も安くて便利になった。しかも、交通事情がよくなったので、魅力を感じれば多くの人が訪れるようになる。都会人の目で見直すことが、田舎の再発見、そして活性化につながることを、多くの事例は教えている。
 これからは、豊かな暮らしを実現するために、都会と地方の新しい在り方を作る時代とも言えよう。宗教の活性化にも、その視点が必要なのではないか。

クョスコニョ    [1] 
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