総計: 1450976  今日: 27  昨日: 95       Home Search SiteMap E-Mail
The Religion News
最新号案内
社説
天地
宗教新聞社講演会
お申し込み
宗教新聞に期待します
訂正記事
 社説平成26年 
 社説平成25年 
 社説平成24年 
 社説平成23年 
 社説平成22年 
 社説平成21年 
 社説平成20年 
 社説平成19年 
 社説平成18年 
 社説平成17年 
 社説平成16年 
  平成17年5月5日号社説
 

新教皇に受け継がれたもの

 「空飛ぶ教皇」とも呼ばれたヨハネ・パウロ二世は四月三日、地上から神の御許に飛び立った。思想信条を超えて多くの人々の尊敬を集め、カトリック教会内外に多大な影響を及ぼした。特に、キリスト教会の一致と諸宗教対話の促進に努め、「平和の巡礼者」として百回余り各国を歴訪した。
 彼は明らかにカトリシズムの体現者であった。それは偏狭な宗教原理主義を意味するものではなく、「保守」か「革新」かという範疇で分け得るものでもない。
 
ペトロの後継者
 前教皇の埋葬証明書には「信仰の遺産の守護者として、教皇は知恵と勇気をもって、全力を尽くしてカトリックの神学的・倫理的・霊的教義を推進し、また、教皇職にある全期間を通じて教会の本来の伝統に反する主張に反対した」(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画訳)と記されている。
 前教皇の言動が保守的と見えるなら、それはキリスト教の伝統に立つ「信仰の遺産の守護者」としての使命感に立ち、一貫した思想体系をもって行動したからであろう。
 革新的と見えるなら、それは、生きて働く聖霊の促しに応えて、神と人類への奉仕者として「信心、聖性、そして父としての普遍的な愛の驚くべきあかしをすべての人に残そう」(同)としたためであろう。
 前教皇は、「ペトロの後継者」として信仰の遺産を守りながら、あらゆる機会を通じて世界に宣べ伝えてきた。在位期間に十四の「回勅」と呼ばれる教理に関する文書を書き、それに準ずる七十余りの公文書を発行した。その他、数多くの講話や演説をなし、数え切れない説教を語ることで、主要な職務を果たした。
 彼が教皇名をヨハネ・パウロと名乗ったのは、第二バチカン公会議を導いた二人の前任者の精神を継承することを明らかに示すためだった。在位期間の言動はすべて第二バチカン公会議の精神を反映したものといえる。教会一致と諸宗教対話はまさにその柱であった。
 さらに、第二バチカン公会議はカトリック教会の「現代化」をうたい、『現代世界憲章』と題する全人類へのメッセージを発表した。そこで、人類が直面している政治、経済、倫理道徳、特に家庭崩壊などの諸問題を挙げ、解決の指針としてキリスト教の世界観、人間観を示した上で、キリスト者自らが世界平和建設の積極的な役割を担う決意を表明した。この文書を起草したのは司教時代の前教皇といわれる。彼は書き記したことを生涯実践したのだ。
 前教皇にとって紀元二〇〇〇年は特別な意味を持っていた。世界の課題を整備し、希望に満ちた三千年紀を迎えたかったようだ。冷戦の終結は明るい兆しであり、紀元二〇〇〇年十二月にはイスラエルを訪問し、イエス・キリスト生誕の地でクリスマスを祝った。
 しかし、二〇〇一年に始まった「新しい戦争」と深刻化する家庭崩壊に、仕事がまだ終わっていないことを自覚した教皇は、衰えた姿を人目にさらすことを恐れず前進し続けた。
 第二バチカン公会議開会三十周年にはカトリック教会の教理の「現代化」も完結し、『カトリック教会のカテキズム』を発布した。この編纂委員会委員長を六年間務めたのが大司教時代の現教皇ベネディクト十六世である。

英知を持つ父に
 悲しみの別れから二週間余りの後、世界は新たな教皇を迎えた。前教皇のために心をこめて哀悼の説教を語ったラッツィンガー枢機卿がベネディクト十六世として就任した。
 新教皇は謙虚さの故に、前任者の強い個性と結びついたヨハネ・パウロの名を差し控えたのかもしれない。しかし、より深い伝統に立ち返ろうとする強い意志もうかがえる。西洋キリスト教文化の礎となった修道霊性の祖である聖ベネディクトと、第一次世界大戦時に国際平和を訴えた前任者とも重なり、冷たい教理の番人ではなく、修道霊性に根ざす英知を持った父の姿を示そうという決意だ。
 就任ミサにおいて、「ペトロの後継者」であり「善き牧者」の重荷を引き受けた新教皇は「教会は生きている」と語った。「信仰の遺産の守護者」として真理と聖霊に導かれ、人類を恐怖と危険にさらす悪や利己主義と闘い続けることを新教皇に期待する。

クョスコニョ    [1] 
 前のテキスト: 平成17年5月20日号社説
 次のテキスト: 平成17年4月20日号社説
 -宗教新聞社- The Religion News Copyright (C) 2004 All rights reserved.