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  平成17年10月20日号社説
  現代人にとっての神話
 十月六日の本紙講演会で、吉田敦彦学習院大学名誉教授は、ギリシャ神話と日本神話の類似と相違について話された。例題に挙げた「大国主とアドニス」は、確かに同じような死と再生を繰り返している。
 相違としては、アドニスが何度再生しても同じような状態であるのに比べ、大国主は再生のたびに賢く、たくましくなっていること。つまり、英雄の成長物語になっていることだという。詳しくは、次号の講演録をご覧頂きたい。
 
 スター・ウォーズ
 世界の神話には共通の構造があることを提唱したのは米国の比較神話学者ジョセフ・キャンベルだ。『千の顔をもつ英雄』『神話の力』などの翻訳がある。学生時代のジョージ・ルーカスがキャンベルの講義を受けて感動し、そこから映画『スター・ウォーズ』を構想していったことはよく知られている。
 近作の『エピソードV』では、悪の帝国の皇帝に従うダース・ベイダーがどうして生まれたのかが明かされる。共和国を守る英雄ジェダイの若者アナキン・スカイウォーカーがフォース(理力)のダーク・サイドに魅了され、悪の側に堕ちてしまうのだが、そのきっかけが最愛の妻パドメを救うためだった。その結果、ジェダイは滅ぼされ、銀河でたった一つの望みは、アナキンがパドメに宿した双子の兄妹のみとなってしまう。この兄妹がルーク・スカイウォーカーとレイア・オーガナ姫となる。
 ちなみに、一九七八年に公開された第一作は、凶悪な銀河帝国の支配に抵抗する反乱軍の物語。レイア姫は反乱軍の指導者の一人で、「デス・スター」と呼ばれる帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功する。宇宙に平和を呼び出すため、設計図を携え故郷へと急ぐレイア姫の背後に、帝国軍の戦艦が迫る……という場面から始まる。ルークはレイア姫を助け、やがて自ら訓練を受けてジェダイとなり、ダース・ベイダーと対決。彼が父であることを知って悩むが、ついには父を倒すことで悪から解放する。
 『スター・ウォーズ』を同じ米国SF映画の『エイリアン』と比較すると、その善悪観の違いがよく分かる。後者では悪は善と相容れないものであり、滅ぼすものでしかない。ところが前者では、善の中から悪が出て、悪が解放されることで善に戻る。その精神的な意味合いの深さが共感を呼び、大ヒットになったのではないか。
 少し乱暴に言うと、ここに一神教と多神教の違いが端的に表れている。悪を徹底してやっつけるのは痛快だが、考えてみると、なぜ彼らはそんな存在になったのか、彼らを消すだけで問題は解決するのか、など疑問が残る。
 だから多神教が良いなどと言うつもりはない。むしろ、多神教・一神教という分け方に問題があるのではないか。キリスト教の三位一体の神やマリア信仰などは多神教の雰囲気が漂うし、ヨーロッパにはケルトなどの古い神話も滅びずに生きている。古事記の最初に登場する「天の御中主の神」は、一神教の創造神に近い。つまり、多神教と一神教は重層的に文化として、人々の生き方としてあると考えたほうが実態に近いと思う。
 
 一人ひとりの課題
 ある脳科学者によると、人間とサルの最大の違いは、人間が未来を考えることだという。チンパンジーにも亡くなったわが子を悲しむ母親は観察されるが、その悲しみは数日しか続かない。ところが、未来を考えるようになった人間は、死を発見し、その不安にとらわれるようになった。そこから神話や宗教が生まれたとするのだが、その脳科学者は、科学は過程を説明するもので、神や霊魂の存在を否定するものではないという。それは、今は科学万能の時代だが、テレビでは心霊現象を扱う番組が花盛りなのを見ても明らかだ。
 神話は、人がどこから来て、どこにいて、どこへ行くのかを語り伝えるもの。時代や社会によって、その語られ方は異なる。柳澤佳子さんが般若心経を訳した『生きて死ぬ智慧』は、現代科学で語る神話ともいえよう。今という時代の難しさは、それを一人ひとりが自分で発見しなければならないところにある。
クョスコニョ    [1] 
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