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  平成17年12月5日号社説
 

歩いて安全まちづくり

 今年も各地で児童が襲われる事件が続いた。多くの可能性に満ちた命が、花を咲かす前に散らされてしまうのは、何ともやりきれない。高速道路や新幹線が通った地方では、犯罪が急増している。私たちは便利さ、快適さを求めながら、どこかで何かを見落としているのではないか。そこで、今年の終わりに安心・安全なまちづくりについて考えてみた。
 
犯罪を防ぐには
 立正大学文学部助教授の小宮信夫さんが『犯罪は「この場所」で起こる』(光文社新書)という本を書いている。日本では犯罪が起きると、誰がどうして、とその原因を探ろうとする。とりわけ犯人の心の中や家庭環境に注目し、週刊誌やテレビで増幅気味に報道されると、それで分かったような気持ちになり、納得してしまう傾向がある。小宮さんは、これが犯罪原因論で、それでは犯罪は防げないという。
 一九九〇年代初め、ケンブリッジ大学に留学した小宮さんが出合ったのが犯罪機会論。これは犯罪がどんな場所で起こるのかに注目し、その機会をつぶすことで犯罪を防ごうという考え方。有名なのは「割れ窓理論」で、ニューヨークのジュリアーニ前市長は、町から割れ窓をなくし、きれいにすることで、犯罪都市の汚名返上に成功した。九〇年代半ば、十年ぶりにニューヨークを訪れ、地下鉄がきれいなこと、ミュージカルを見た後、深夜にホテルまで歩いて帰っても安全なことに驚いた。
 犯罪者はまずその町を下見する。窓が割れ、ごみが散乱していると、それは住民の地域に対する関心の低さを表し、ここで犯罪を起こしても見つかること、通報されることはない、と思う。逆に町がきれいで、見知らぬ人から「こんにちは」などと声をかけられようものなら、ここでは無理だと判断する。
 犯罪が起こる場所の特徴は、「入りやすく」「見えにくい」こと。既に欧米の自治体では、その基準に沿って、安全な公園作りを進めているという。例えば、柵を設けて関係ない人は入りにくくし、周りの家や通行人からは、遊んでいる子供たちが見えやすくする。
 小宮さんは、安心・安全なまちづくりのツールとして、「地域安全マップ」作りを進めている。基本的な授業を受けた小中学生が、学生や教師、警察官らと通学路などを歩き、犯罪が起こりやすい場所をチェックし、地域の人にインタビューし、それを大きな地図に描き込むもの。子供たちはゲームのように楽しんでやるという。大事なのは、子供たちが自分たちの目で判断することで、それによって彼らの防犯意識も高まる。
 感心したのは、それが地域づくりにつながっていることだ。子供たちが頑張っていることで大人も関心を寄せ、親切な大人に出会えたことで、子供も地域が好きになる。そうやって、次の世代の地域のリーダーが育っていく、と小宮さんは言う。
 子供のころ、通学の途中に出会ったおばあさんにあいさつしなかったら、その人から話を聞いた祖母から叱られた、という経験を持つ人もいるだろう。そうやって地域社会は守られていた。もう一つ言うなら、その中心に寺があった。
 
健康づくりにも
 自分が住んでいる地域に関心を持つには、歩いてみるといい。「愛することは知ること」で、知らない地域を愛することはできない。玄関先や軒下の花に感心することも多い。意外な店を発見して、今度来てみようと思う。
 ある生活習慣病の医師は、いくら患者にウオーキングを勧めても続かないことから、「生活ウオーキング」を提唱している。階段を使う、一駅歩くなど日常生活の中で歩く距離を延ばす。ドイツ人は健康のため、家の近くを一時間くらい平気で歩くそうなので、日本人にできないことはない。
 それで健康な高齢者が増え、健康保険の赤字が減り、しかも安心・安全なまちづくりができるのなら、こんないいことはない。そんな思いで、年末の町を歩いてみよう。

クョスコニョ    [1] 
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