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平成17年3月20日号[天地] |
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老親の在宅介護には多くの困難が付きまとう。最大の問題は、親に対する尊敬の念が失われてしまうことだ。高松市で開かれたシンポジウムで森久美子さんは、「慈母観音のようだった祖母が汚物で部屋中を汚すのに耐えられなかった」と語った。母親を介護した歌手の橋幸夫さんも、「お母さんは宇宙人」と著書に書いている。そう思わないと尊厳を保つことができないからだろう▼これは肉親による介護の欠点でもある。元気なころのイメージがあるため、今の状態をあるがままに受け止めることができない。そうなると、むしろ介護のプロに任せた方がよい。感情に左右されず、必要なケアをしてくれるからだ▼天地子も脳内出血で倒れた母を三年間、ショートステイを利用しながら在宅介護をしていた。四年目からは特別養護老人ホームに入っている。認知症はあるが会話はでき、車椅子で外出することも可能なので、幸運な方だろう▼施設に入るための診察を受けた時、「あなたのお名前は」と聞く医師に、母は息子である私の名前を答え続けた。それを聞きながら、私は二十年以上、一人暮らしさせたのを悔いていた。そんな思いから、時間を作っては母を訪ね、花見に連れ出したりしている▼昔のことを知っている人を訪ね、いろいろ話していると、それまで黙っていた母が急に話し出すことがある。家族より近所の人との間に、もっと深い交わりを見ることもある。今年八十五になる母には、息子の知らない歴史が多い。小さな体験からしても、家族と専門家の協力で、尊厳ある高齢者介護を実現したいものだと思う。
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