日本宗教学会公開シンポ 「死者と生者の接点」を討議 円環的死生観の見直しを
「死者と生者の接点」をめぐり議論が交わされた公開シンポジウム
=9月16日、仙台市青葉区の東北大学川内キャンパス
日本宗教学会(星野英紀会長)第六十五回学術大会が九月十六日から十八日までの三日間、「死をめぐる諸問題」をテーマに仙台市青葉区の東北大学で開かれた。十六日には公開シンポジウム「死者と生者の接点」があり、宮家準(みやけ・ひとし)慶應義塾大学名誉教授、藤井正雄大正大学名誉教授、山形孝夫宮城学院女子大学名誉教授がそれぞれ発表し、質疑討論が行われた。司会は華園聰麿(としまろ)東北大学名誉教授が務め、会員はじめ学生、市民ら約二百人が熱心に耳を傾けた。
あいさつに立った星野会長は、「死は現代における最も重要な課題の一つで、それぞれ宗教的背景を持つ三人の講師に登場して頂く。一般の方も議論に加わってほしい」と述べた。また、実行委員長の鈴木岩弓東北大学教授は、「死」をテーマに取り上げたのは、広い分野とかかわりがあり、東北大学の宗教学が死生観の研究を重ねてきたことからだと説明し、「人は生者だけでなく死者ともかかわりを持って生きている。この古くて新しい問題から、現代の日本の状況も見据えたい」と語った。 最初に、宮家氏は民俗宗教の視点から、「死者と生者の接点」である葬送儀礼や墓制の変化から、現代人における死生観の問題について次のように述べた。 日本の民俗宗教は、自然宗教に仏教、道教、儒教、神道などが融合した生活宗教である。宗教学者で恩師の岸本英夫東京大学教授は、当初、死を恐れる思いが強かったが、やがて「死は全体的な別れで、耐えることができる。自分の死後もこの世は存在していて、自分は宇宙の大きな霊に帰る」という考えになった。信仰を持たない人だったが、これは日本の民俗宗教の考えに近い。 柳田国男は敗戦直前に書いた『先祖の話』(筑摩書房)で、死者の魂は十万億土の彼方ではなく、故郷の山の高みから、いつも子孫のなりわいを見守っているという、仏教の死生観とは異なる日本人の他界観を展開した。 日本人の他界観は、死霊は祖霊から祖神、さらに氏神へと高まっていくというもの。死後も魂は成長する。そして、人々は祖霊の居所とされる霊山で修行した。死を擬して山に入り、修行することで自然と一体化し、心身一如となる。つまり、修行は生者と死者との交流でもあった。・・・
高野山大で国際密教学術大会 密教文化の歴史と展望
密教について自説を発表する研究者 =7日、高野山大学
高野山真言宗の高野山大学(和歌山県高野町)は九月五日から八日まで、創立百二十周年の記念行事として「密教文化の歴史と展望」をテーマに国際密教学術大会を開いた。日本、米国、中国、インドなど十二カ国から約百三十人の密教研究者が参加した。 初日は「密教芸術公演」が行われ、仏教音楽の声明や説教浄瑠璃など、仏教が日本の伝統芸能に与えた影響を紹介。二日目からは各部会に分かれて研究発表やパネルディスカッションなどを行い、現代社会における密教の役割などについて考え合った。 開会式で同大学の生井智紹学長は、「多様性の認容と不二の自覚」と題して講演。今回の大会の意義は多様性の中にアイデンティティーを求めるところにあると前置きし、「現代社会の課題として、宗教研究者は一つの調和世界の理想像を実現するため、それに参与するものとしての同一性を確認する必要がある」と指摘した。 その上で、「互いの多様性を尊重し合いながらも不二とする仏教の教えは、仏教徒内部の多様なあり方も調和ある統合態として捉えることができるはずだ」と述べ、恆ス様不二揩ニいう原理がそれを可能にすると強調した。 さらに、同学長は「密教の特色とは、実際の具体的な事象に仏の世界との同一性を見る儀礼と図像である。いのちを多様に生かし合う曼荼羅の姿こそ、その核心だ」と述べ、「現代社会がいかに調和した世界を構築できるかを考える時、その論理モデルとして曼荼羅の多様不二論が大いなるヒントとなる」と語った。 大会期間中、参加した研究者は短時間ながらそれぞれ研究成果を発表した。主なものとしては、高木、元・同大名誉教授が「弘法大師空海の生涯における転結」のテーマの下、空海と最澄との交流と別れの背景を探り、従来とは異なる視点からの考察を披露した。 吉田宏哲・大正大学名誉教授は「真言密教と西洋哲学」のテーマを扱い、真言密教の特質を列挙し、それらと西洋・インド・中国の思想・宗教とを比較検討。山内清史・神奈川大学教授は四国八十八カ所巡礼の社会的意味合いについて、グラフや図を使いながら解説した。・・・
<2面>
- ナーランダ大学の復興を
インド文化協会代表団が訪印 ジョーシー前文相らと会談
<3面>
- JAL東福寺音舞台
平原綾香らが競演
- 連載・モンゴル帝国の世界史(最終回)
モンゴルから現代へ
<4面>
- 関東甲信越静地区宗教法人実務研修会
法務局、コンピューター化進む
- 新連載・古典に親しむ
市谷亀岡八幡宮宮司 梶謙治 『日本霊異記』上
<5面>
- 多々良学園問題が裁判に
2行が総額12億円求め提訴 曹洞宗
片山文彦花園神社宮司が上梓 『日本人はなぜ無宗教でいられるのか』
<6面>
- 人・素佐男神社・八多神社宮司 酒井勉師
神道文化は世界に通じる
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