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  平成18年1月20日号社説
 

ふるさとを守ろう
 記録的な大雪で豪雪地帯の被害が報じられている。とりわけ過疎地域は高齢化も進み、雪降ろしをする力が失われているのが深刻だ。美しい自然は、半面、厳しさも持っている。自然との共生という言葉はきれいだが、その実は自然との闘いだった。ふるさとの自然は人間との力関係によって、微妙なバランスの上に保たれている。このまま過疎化、高齢化が進むと、そのバランスが崩れ、日本のふるさとの多くが失われてしまうだろう。

都市化で失うもの
 徳島県の剣山のふもとにある村を訪れたことがある。村長は、各戸に取り付け道路を付けるのが目標だと話していた。救急車や消防車が入る道のない家がまだ多い。近くの道路から作業用の小型モノレールを付け、人や大きな荷物を運搬していた。しかし、そのエンジンをかけることのできない高齢者が増えているという。輸入木材に押されて林業が成り立たなくなり、村の経済は公共事業に依存するようになった。村には高校がないため、子供が高校に行くようになると下宿させることになり、教育費がかさむ。経済が発展することで、地域での生活が難しくなっているのだ。
 「経済が発展したからこそ、私たちはただの消費者になり、雇用されなければ生きていけない人間になった。市民が生まれ、人間が個人になったからこそ、私たちは自分の居心地のよさにしか感心を示さなくなり、連帯や関係性を失った」
 東京と群馬の山村に暮らす立教大学教授の内山節さんは『「里」という思想』(新潮選書)でこう述べている。都会での生活は経済や生活を維持するには必要だが、それとの引き換えに失うものも多い。しかし、それは失ってから気付くもので、取り戻すことができない。
 全国で市町村合併が進んでいるが、その最大の理由は自治体の財政難だ。高度成長期に増えた福祉や教育などの経費が、低成長期になって自治体経営を圧迫している。合併に伴う地方債の増額や人件費の削減で一息つけるが、その先の展望を持っている自治体は少ない。悪くすれば、広くなった中で過密過疎が進み、過疎地はますます暮らしにくくなる。山間地ではサルやイノシシ、シカなどの害で畑作が不可能になっているところが多い。人間界と自然界とのバランスが崩れてきている。
 清流で知られる高知の山村を訪ねると、手入れされなくなった森林が荒れ、崩れた土砂が川を汚していた。昭和五十九年の台風被害の後、村人は復旧工事の公共事業に従事するようになり、その間に棚田は耕作されなくなった。工事がなくなっても、農業に戻ることはできない。村では間伐の作業員として雇用を図っていたが、その数は少ない。
 このまま日本のふるさとが崩壊していくと、まず心配されるのは水源地の荒廃だ。そのため、愛媛県では独自に水源税を定め、県民税で水源地の整備を進めようとしている。神奈川県でも水源地のある山梨県への予算措置を実施し、水域としての広域行政を行っている。自治体レベルではそうした展開が必要だろうが、より重要なのは共同体としてのふるさとをどう維持するかにある。
 
農村との関係づくり
 豪雪地帯でも比較的被害の少なかった地域では、人々が協力して雪降ろしをし、安否を確認し合っていた。遠くの親戚より近くの近所という暮らしが、過疎地の人たちを支えている。そうした連帯感と都市化に伴う個人化との折り合いを付けていくことが、これからの日本の課題になる。
 都会的な生活は人々に生きる手段は提供しても、生きる意味は提供しない。それが、豊かさの中で自己喪失感が広がる背景だ。もちろん、生きる意味は自分で探し出すものであり、それを求める中で「ふるさと」も再発見されよう。ふるさととは家族と自分を取り巻く環境だけでなく、何より人間関係である。そうした共同体の意味を発見していけば、さらに日本のふるさととしての自然を守ることの意義を見いだすことになる。その上で、都市と農村の関係づくりを進めなければ、日本の国土は守れない。

クョスコニョ    [1] 
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