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  平成18年3月20日号社説
 

「都市の品格」と宗教

 「経済的な繁栄を手にし、成熟社会に到達した私たちは何を得て何を失ったのか、喪失したものの大きさに慄然(りつぜん)とせざるを得ません。日本人としての『志』をどこかに置き去りにしてきた」
 「今なすべきは、国家・民族として真に向かうべき方向を見定めて『自ら立つ国』として自己を取り戻していくことです。日本の底力と成熟都市・東京の存在を世界に対してはっきりと示す大きな縁(よすが)としなければなりません。日本の縮図でもある東京のさまざまな優位性が、世界の大都市問題の解決に大いに貢献し、二十一世紀の新しい都市モデルを提示できる」
 二〇一六年のオリンピック招致を表明した石原慎太郎東京都知事は、その意義をこう訴えた。藤原正彦さん流に言うと「都市の品格」を問う東京五輪ということになる。

日本橋を元の姿に
 一九六四年の東京五輪は戦後十九年にして復興・発展を遂げた日本を世界に知らせるもの。十月十日の開会を目標に、各種競技場をはじめ新幹線、高速道路が急ピッチで整備され、東京はその姿を変貌させた。経済の大きな起爆剤となり、以後、日本は高度経済成長を遂げることになる。では、その陰で何が失われたのか。
 一つに、日本橋の風景がある。首都高速道路建設を急ぐ政府は、江戸の街に張り巡らされていた運河の上に、川面にふたをするように高架道路を建設した。そして、江戸時代に五街道が整備され、その起点として日本橋川の上に架けられた日本橋も、高速道路の下に潜んでしまった。
 今、日本橋から日本橋川を下ると隅田川に出る。それを少し上ると、神田川が流れ込んでおり、そこを上ると日本橋川の上流との分岐点がある。つまり、日本橋川、隅田川、神田川はループ状につながっていて、これを工学院大学名誉教授の波多江健郎さんは「リバーループ」と名付けている。
 小船で回ってみると、所々江戸時代の石垣も残っていて、江戸が水の都だったことがよく分かる。川から眺める街の風景は新鮮で、飯田橋辺りの神田川は河岸が親水公園として整備され、散歩を楽しめる。しかし、ほとんどの建物は川に背を向けて建っていた。途中、ごみの運搬船に出合ったが、排水以外には、その程度にしか利用されていない。
 小泉純一郎首相が先日、日本橋を元の風景に戻したらいいと発言して、橋や川の風景を愛する人たちが期待を膨らませている。首都高の地下化や移設は莫大な費用を伴うので実現は容易でないが、二十一世紀の成熟した東京の姿を示すシンボルとなり得る。
 一方、二〇〇八年の北京五輪を目指す中国では、すさまじい勢いで古い街並みが取り壊されている。一九八八年のソウル五輪前の韓国も同様で、地権者の権利が守られる日本では見られないような光景だった。もっとも、ソウルでは数年前、四百二十億円をかけて都心を流れる清渓川(チョンゲチョン)の上にあった高速道路を撤去し、かつての清流を復元したというから、ラジカルに日本の先を走る面もある。
 『中国農民調査』(文藝春秋)や報道によると、強権的な開発がとりわけ農村に大きな悲劇をもたらし、農民の暴動も発生している。日本以上に短い期間での近代化に、無理を重ねているからだろうが、それが国民の人権を著しく蹂躙するとなると、民主国家として見過ごすわけにはいかない。

宗教的な風景こそ
 都市の品格とは、言い換えると都市の精神性である。聖性と言ってもいい。都市学者の上田篤さんによると、寺院や山並みなど聖なるものが市民の目に入る都市は、不思議と犯罪が少ないという。品格ある都市造りを進める上で、宗教的な風景は不可欠だろう。そんな視点からも、宗教界は何か提言を考えるべきでないか。

クョスコニョ    [1] 
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