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  平成18年5月5日号社説
 

仏教に基づく平和のために

 新緑の嵯峨野をレンタルサイクルで回ったついでに、太秦の広隆寺まで足を延ばした。学生時代に見た弥勒菩薩に再会するためだ。化野(あだしの)念仏寺と大覚寺は枝垂桜が見ごろで、祇王寺では苔の上に落ちた紅ツバキの花弁が印象的。広沢池の端を走り、竹林の横を走り抜け、十分ほどで行き着いた。
 
広隆寺の弥勒菩薩
 学生時代にお堂の中で見た弥勒菩薩は、昭和五十年代にできた霊宝殿の中に収められていた。昔と比べ、少し距離が遠くなったのが残念だが、多くの人が最も美しいとたたえたその表情とたたずまいは変わらない。
 昭和三十五年、この像を拝観に来た京大生が、つい美しい姿に魅せられ、ほおずりしようとして右手の薬指を折ってしまった。恐ろしくなりその指を持ち帰り捨てたが、その後発見され修復されたという話がある。真相は、「実物を見て、これが本物なのかと期待外れだった。監視人がいなかったので、いたずら心で触れてしまったが、あの時の心理は今でも説明できない」(直後の取材に答えて)と、やや違っている。
 ドイツの哲学者カール・ヤスパースがこの仏像を激賞したことはよく知られている。受付で買った組み写真に添えて、それが紹介されていた。
 「広隆寺の弥勤像には、真に完成され切った人間実存の最高の理念が、あますところなく表現され尽しています。それは地上に於けるすべての時間的なるもの、束縛を超えて達し得た人間の存在の最も清浄な、最も円満な、最も永遼な、姿のシンボルであると思います。(中略)これほど人間実存の本当の平和な姿を具現した芸術品を見たことは、未だ嘗てありませんでした。この仏像は我々人間の持つ心の永遠の平和の理想を真にあますところなく最高度に表徴しているものです」(篠原正瑛著『敗戦の彼岸にあるもの』より)
 弥勒菩薩は、釈迦が入滅した五十六億七千万年後の未来に姿を現す未来仏で、今は、兜卒天で修行しているという。このため、中国・朝鮮半島・日本において、弥勒菩薩の兜率天に往生しようと願う信仰(上生信仰)が流行した。
 それに対して中国では、弥勒如来(弥勒仏)の下生は今なされるから、それに備えなければならないという下生信仰が流行した。浄土信仰に類した上生信仰に対して、下生信仰は、弥勒下生に合わせて現世を変革すべきという、終末論的な要素が強い。そのため、反体制の集団に利用されたり、それ自体が反体制化する例が多かったという。
 四月八日、インドのニューデリーで開かれた釈迦生誕二千五百五十年祭には、チベットから亡命したカルマパ法王十七世が出席したため、中国の反発を買ったという。それ以前に、仏教の行事に大統領がメッセージを寄せ、現職閣僚が出席して祝辞を述べるのは、政教分離に神経質な日本では考えられない。同じアジアの民主主義国でありながら、宗教に関しては日本の方が少しいびつなのではないかと思った。
 他方、中国の浙江省杭州市と船山市で四月十三―十六日、初めて開かれた「世界仏教フォーラム」には、中国政府が認定したパンチェン・ラマ十一世が初めて公開の場に姿を見せ、あいさつした。アジアを視野に入れた中国の、仏教をめぐる政治的駆け引きの一つであろう。
 
東アジア共同体の理念
 将来、何らかの形で東アジア共同体が形成されるとすると、その共通理念として見直されるのが仏教ではないか。仏教を基盤として、近代的な自由や民主主義をどう意義付けるか、その観点からの研究が必要になる。
 例えば、末木文美士東大教授は、仏教が政治に及ぼした影響を、日本の政治学は見直すべきだと主張している。それを、仏教が発祥したインド、大乗仏教をはぐくんだ中国、発展させた朝鮮と日本、そして上座部仏教として定着している南・東南アジア諸国が連携して進められるようになれば、アジアの二十一世紀は明るさがかなり増すように思う。

クョスコニョ    [1] 
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