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  平成18年8月5・20日合併号社説
 

8月15日に思うこと

 戦後六十一回めの八月十五日が巡って来る。七月二十日、日本経済新聞が昭和天皇のお言葉をメモしたと思われる、富田朝彦元宮内庁長官の一九八八年四月二十八日のメモを公表したことから、その波紋が広がっている。それぞれの立場によって意見は異なるが、共通しているのは、日本と日本人にとっての昭和天皇という存在の大きさだ。日本が始まって以来の国としての敗戦と、それに続く奇跡の復興を体験した昭和という時代を、冷静に検証するには、まだ時が早過ぎるのかもしれない。
 
命の大切さこそ
 「戦争体験を語り継ぐ会」会長の稲村繁さんは、五年前から小中高校、大学を訪れ、子供たちに四年間のシベリア抑留や戦時中の体験を語っている。活動を続けるうちに、稲村さんは「戦争の悲惨さよりも生きることの大切さを話すようになった」という。中学三年生から稲村さんに届けられた感想文を見せてもらった。
 「昨日の夜まで一緒に寝ていた人が、朝には冷たくなっている……私には想像もつきませんが、逆に言えば、私の身にも起こることなのだと思いました。……その日、生きて起きられるのは良いことなのだという稲村さんの言葉は、私の心に一番深くしみました」
 「これまで、七十歳まで生きればいいなどと、命をとても軽く見ていました。しかし、人は自分だけで生きるのではない、いろいろな人の助けによって生きているということを学びました」
 稲村さんは届けられた感想や質問に応じて一人ひとりに返事を、巻紙に筆で書く。クラスでは、稲村さんからの巻紙を黒板に張り出した後、コピーを取り、生徒たちに自分宛ての部分を手渡している。稲村さんを訪ねて来たある中学生は、「お守り代わりに大事に持っています」と言って、生徒手帳に挟んだ小学生の時のコピーを見せたという。
 昭和十七年、二十一歳で入隊した稲村さんは満州の航空部隊に転属された。二十年、突如侵攻して来たソ連軍に捕らわれ、シベリアに抑留される。そこでは極寒下の強制労働が待っていた。指揮官だった稲村さんは、毎日のように死体の処理に追われた。「戦争が終わってから死んで何になるかと、無常観を抱いた」という。
 稲村さんは生徒たちに三百五十グラムのパンを見せ、「これで一日働いていたのだよ」と話す。「それくらいの食料だったら、ぼくはもう死んでいます」という感想を書いた子に、「人間というものは、いざとなったらなかなか死ぬもんじゃないよ」と返事を書く。
 小学生には、大空襲や学童疎開などを話す。「君たちが戦争中に育っていたら、お父さん、お母さんと別れ、田舎に行かないといけないよ」と言うと、子供たちは身につまされる。中学生には少年航空兵について、「当時は五年制の中学を出た少年がすぐに兵隊に行っていたよ」などと。
 今、稲村さんが強調するのは生きることの大切さ。「私は八十五年生きてきた中で、死をたくさん体験してきました。だから死なないように一生懸命頑張っています」と語り掛け、「君たちはとても恵まれているけど、これが当たり前ではない。朝起きたら、まず、生きていてありがたいと思いなさい。毎日それを続けると、自然に長生きできるようになるよ」と続ける。
 多くの子が、「生きることに前向きになりました」という感想を寄せてくる。「結婚して子供を産んだら、昔戦争の話を聞いたんだよと話してやりたい」と書いてきた小学六年生の女の子もいたという。

生きている意味
 話の終わりに稲村さんは「存命のよろこび」と黒板に書く。『徒然草』にある言葉だ。そして「生きていることを喜びなさい。それを長く続けるには、今生きてる喜びを日々噛みしめなさい」と結ぶ。それが一番生徒に感銘を与えるという。確かに戦争の話に驚くよりも、命の大切さに気付くことのほうが大事だ。
 八月十五日は先祖がわが家に帰るお盆でもある。命のつながりの中で、奇跡的に生を得た自分という存在。その意味を深める一日でありたい。

クョスコニョ    [1] 
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