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   平成18年4月20日号[天地]
   デリーからバスで四時間半、世界遺産のタージ・マハールとアグラ城を観光した。前者は、ムガール帝国五代皇帝シャー・ジャハーンが、三十八歳で亡くなった愛妃ムムターズ・マハールのために建てた霊廟で、タージ・マハールはその愛称▼彼女は十四人目の子供を陣中で出産した後、産褥熱にかかった。「私が死んだら、小さくてもいいから墓廟を造ってください」と言い残して。皇帝がデカン高原を平定したのはその二年後の一六三二年のこと。戦の間中、王は彼女のために壮大な霊廟を造ることを考え続けていた▼王はペルシャとトルコからイスラーム建築の専門家を招き、図面を描かせた。基調となる白大理石はイタリアから、そこに嵌(は)め込む貴石類は、国の内外から取り寄せた。大霊廟の前には広大な庭園と泉水を、三つの楼門と正面には赤砂岩で大門も造った。二万人の人夫が酷使され、完成したのは二十二年後、王六十二歳の時▼この間、ムガール帝国の国力は確実に傾く。その責任は王の浪費にありと考えた第四皇子アウラングゼーブは、王に従順な二人の兄を殺して皇位継承権を握り、王をアグラ城内のムサンマン・ブルジュ(囚われの塔)に幽閉した。そこからは、鉄格子越しにヤムナ河をはさんだ右手に、タージ・マハールが遠望できる。シャー・ジャハーンは、日がな一日、愛妃が眠る白亜の大霊廟を眺める毎日を送ったという。八年後の一六六六年、王は七十四歳でこの世を去った▼帰りの車中、天地子が「私も三十八歳の時の妻になら、それぐらいしてもいい」と言うと、同行の女性に「六十歳で失礼しました」と叱られた。
クョスコニョ    [1] 
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