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平成18年5月5日号[天地] |
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ニューデリーのホテルの庭で竹の子が出ているのを見て、急にわが家の竹の子のことが心配になった。東南アジアから東アジアにかけて、竹は大きな株から群生するように伸びている。日本の竹のように、地下茎を伸ばして、所々から芽を出すのとは違う。成長が早いのは同じで、竹博士と呼ばれた故上田弘一郎・京都大名誉教授は、竹を使って紙を製造することを構想していた▼竹やぶのある家で育った天地子の弁当には、春になると竹の子の煮物が入っていた。最初は柔らかいのだが、次第に硬くなっていったのを、懐かしい母の味とともに覚えている。そんなわけで、帰国すると大急ぎで竹やぶに出向いた。数本は一メートルほどに伸びていたが、食べごろなのもたくさん掘ることができた▼「間違っても皮をむいてから湯がかないこと」と料理番組で言われたのを守り、大きな鍋に湯を沸かし、皮ごと放り込む。ぬかは散らばらないように紙パックに入れてある。湯がき上がった竹の子を水でさまし、薄くスライスする。庭から取ってきたサンショウの葉をすり鉢で潰し、からし酢味噌で和えて食べると、口いっぱいに春の味覚が広がった。同時に、これまでの苦労を忘れてしまう▼年間を通していろいろな食材が買える便利さとともに、私たちは旬の味を多く失っているのではないか。その便利さは、さまざまな自然界の異変として、むしろ弊害が心配されている。多様な自然に囲まれ、その不便さを楽しむ心を持たなければ、豊かな自然を守ることはできないようだ。
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