宗教教育の定着目指す 宗教と教育シンポジウム 日本宗教連盟が創立60周年
3時間にわたって公教育における宗教教育が論じられた
=3月27日、東京・港区の虎ノ門パストラル
財団法人日本宗教連盟(理事長、杉山一太郎扶桑教管長=就任は四月一日)創立六十周年記念の「宗教と教育シンポジウム」が三月二十七日、東京・港区の虎ノ門パストラルで加盟教団役員ら百人が参加して開催された。「今日の家庭や学校などの教育の場で直面している諸問題について宗教の視点から論じていく」との趣旨で、同連盟は、これからも「宗教心と教育」をテーマに二十年、三十年先を視野にシンポジウムを重ね公教育における宗教教育の定着に努める。
パネリストは星野英紀大正大学学長、諏訪秀一大寄諏訪神社宮司(元公立中学校校長)、水口洋玉川聖学院中高部長(プロテスタント系)、浅見浩子元淑徳与野高等学校教頭(浄土宗系)の四氏。司会は島薗進東京大学大学院教授。公教育で宗教教育は「文化教育としてできる」(星野氏)、「知識教育、情操教育で取り入れる」(諏訪氏)、「人間学として可能」(水口氏)と明言、改正教育基本法が追い風となった発言が注意を引いた。 最初に、四氏は概要次のように所見を述べた。 星野氏「清水書院などの教科書を見る限り公教育で宗教教育が無視されているとは思わない。第十五条で『宗教に関する一般的な教養』を加えた改正教育基本法を前進とみる。大学生がいろいろな宗教に引かれていくのも宗教の一般知識がないためだ。高校生の情操教育にもつながっていくだろう。私立の宗教教育の効果についても併せ考えるべきだ。大正大学に世界の宗教教科書を翻訳作業するプロジェクトがある。五歳から七歳を対象とした英国の教科書でイスラーム信仰をもつ少女の日常を紹介し異文化の理解に努めながら宗教知識を通し宗教情操教育をしている。宗教にかかわらなかった人が理解を示していったという事例がある」 諏訪氏「校長時代は掃除、あいさつを徹底してきた。掃除は祓いや禊(みそ)ぎに通じる。あいさつは祭祀の厳修との関係だろう。あいさつさえできない学校だったが一年で履物がそろうようになった。朝のあいさつ励行に三年かかった。あいさつが変わると学校が変わる。長欠児には父親不在が多い。家庭はいのちを生んだところ、いのちが連続するところ、敬神崇祖、倫理の源泉との思いで家庭教育に取り組んできた。退職後は宮司として子供のしつけを教えている。改正教育基本法に『郷土を愛する態度を養う』がある。伝統文化の継承、発展これを豊かにすることが日本の文化が世界の文化に貢献する大きな力になる」 水口氏「死んだら無になるというニヒリズム。ジコチュウ(自己中心)をプラスイメージにする社会風潮にどう宗教が切り込んでいくか。戦後教育は死とどう向き合うか、人間性の本質は何か、を忘れてきた。ここが問題だ。教育文化は言葉を通して価値を伝達していく。それにもかかわらず言葉の関連性が断絶されている。時代的風潮を超える主体的な生き方を教えるのが宗教の役割のはずだ。宗教は人と人との関連性という視点―次世代とのつながり、自然・宇宙との関連もそうだが―この視点こそ宗教情操教育に通じる。科学信仰の時代のなかで宗教の言葉を現代的に翻訳する必要がある」・・・
山蔭基央師が講演 環境問題は神道の真骨頂
環境問題について講演する山蔭基央師=3月12日、東京・新宿の花園神社
神道時事問題研究会(代表:片山文彦花園神社宮司、山本雅道氷川神社宮司)は歴史、人生、社会など様々な時事問題について月一回の研究会を開いており、今年の年間テーマは「環境問題」。三月十二日、東京・新宿区の花園神社社務所で、山蔭神道前管長の山蔭基央師が「神道から見た環境問題」と題し語った。 山蔭師は、まず世界的に進行しつつある環境破壊の現状を紹介。特に現代中国で黄河の枯渇・断流に代表されるように、森林伐採により「水資源の保有能力」が破壊されていることを指摘した。その上で、比較宗教、比較文化的な観点から、以下のように「神道の環境論」を展開した。 人間がかかわる環境には「自然環境と生活環境」があり、それらは自然に対する人間の感性と知性の問題である。これについて世界の歴史をたどってみると、中国には自然林を略奪し、人工的な富を奪って「新王朝」を築き上げるという遊牧民特有の「略奪の感性」がある。それが「環境破壊」と「文化破壊」を招いた。 ギリシャではかつてカシ、ナラ、マツなどが密生していたが、それら大森林を伐採して、経済優先でオリーブのみを栽培したことが滅亡を招く結果となった。チグリス・ユーフラテス文明の森林環境も、当時の世界各国から奪われ、イエス・キリスト誕生の頃には広漠たる土漠に変じていた。それを「よし」とする根拠は「すべてのものを人間に司らせた」という、エジプトの森林略奪思想の影響を受けた旧約聖書にある。 これに対して、「森と水と生物の関係」を合理的に知っていた民族は「日本民族の祖先たち」であり、応神天皇は三世紀当時、遷都や造船に大量の巨木を必要としたが、自らの皇子を大山守命(おおやまもりのみこと)、現代の林野庁長官に任じ、山の植林を奨励し、「輪伐、間伐の制」を設けるなど、「育林」の知恵によって国土を守ってきた歴史がある。 近代でも軍用で伐採された用材は、日本全国をはげ山にしたが、昭和二十五年以来、天皇皇后両陛下のご臨席の下行われる全国植樹祭は国土緑化運動の中核をなし、日本全国は緑の山を回復した。 これら日本人の自然環境である森林は「鎮守の森」が基軸にあり、その背後には応神朝以来の「知性」が遺り、それが「感性」となって今日に伝わっている。環境問題は神道の真骨頂であり、地球環境問題を「地球の汚れ」と位置づけるなら、「大祓詞」は環境浄化の鍵を握っている。薄い皮膜のような水をたたえた生命体である地球の環境浄化に協力したい。・・・
<2面>
- 初のキリスト教会建設
200万人移民労働者に配慮 カタール
- プーチン大統領、教皇と会談
ロシア訪問招請せず
<3面>
- 釈尊生誕2550年インド巡礼【下】
真清浄寺の社会活動を視察 小学校に井戸を―ブッダガヤ 乳幼児にミルクを―セーレム
<4・5面>
- 花まつり特集
仏教の源流を訪ねて 北インドの仏跡めぐり ブッダガヤー、サルナート ヒンドゥー教の聖地へも
<6面>
- 成田山新勝寺総門上棟式
工匠、棟木打固め無魔落慶祈る
- 神社本庁編『日本を語る』発刊
国家観を見直す書
<7面>
- 公開シンポ「死者を送る」
京都・宗教系大学院連合が主催
- 神道禊教で合同祖霊祭
神理教・巫部倭文彦師が講話
<8面>
- 人・タイ上座部仏教研究センター所長 松下正弘さん
タイ北部で瞑想と勉強三昧
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