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  平成19年2月20日号社説
 

宗教は社会を変えうるか

 二月五日から十四日、インドのブッダガヤ、ベナレス、そしてアラハバードを旅して、仏教とヒンドゥー教の聖地を訪れた。ブッダ生誕二千五百五十年記念の国際会議と世界ヒンドゥー大会を取材するためだが、インドを体験するたびに、やや重い気持ちで宗教と社会のかかわりを考えさせられてしまう。宗教は本当に社会を変えられるのだろうか、と。
 
インドの聖地へ
 紀元前五世紀ころ、インドに生まれたブッダは、保守的なバラモン教によるカースト制度の世界を打ち壊し、新興商人層などに受け入れられた。自らの心の闇の救いをブッダの教えに見いだしたアショーカ王は、史上初めて統一を果たしたインド全土に仏教を広めた。しかし、王の死後、仏教は次第に衰退する。そして十二世紀からのイスラームの侵攻により、インドではほぼ姿を消してしまう。インドは再びバラモン教の流れを汲むヒンドゥー教の世界に戻った。
 長い歳月を経て二十世紀、ガンジーやネルーによりカースト制度の解放が図られ、さらにアンベドカールはそのためにニューブディズムを興す。五木寛之さんは『21世紀仏教への旅 インド編』(上・下)で、その数が既に大きな勢力になっていると書いているが、残念ながら短い旅でその印象は受けられなかった。ブッダガヤで開かれた国際会議で、その言葉を聞いただけである。
 IT(情報技術)景気に沸くインドからは程遠い、ブッダガヤのあるビハール州の農村は、青い麦畑に菜の花が交ざって咲いているのが何とも哀しかった。あぜはでこぼこでくねり、灌がいの水路もない。懐かしい風景という感じ方もあるだろうが、管理されていない状況を示していた。もちろん、食糧を自給しているインドには近代的な大規模農場もある。しかし、それが全土にいきわたるのは気の遠くなるような先の話だろう。
 都会にはとにかく人が溢れている。とりわけベナレスの道路は混雑を極め、その中に動物たちが共に暮らしているというインドの縮図だった。インドに留学している日本人には、パトナに次いで危険な街だから注意するように言われ、インド人には宗教と歓楽が、聖と俗とが共存する街だと紹介された。
 ガンジス川の沐浴で知られるベナレスから上流にあるアラハバードは、ガンジスにヤムナー川が合流する、さらなるヒンドゥーの聖地。乾季で現れた広大な河原を使って、六年に一度の第三回世界ヒンドゥー大会が開かれていた。
 興味深かったのは、指導者たちが口々に「ヒンドゥー国家をつくろう」「政治のヒンドゥー化を」と、宗教というより政治的なスローガンを訴えていたことだ。いわゆるヒンドゥー・ナショナリズムとの関連を指摘する人もいる。ネルー大学で日本語を教えている女性の準教授によると、米国など海外に出たインド人の間でイスラームやキリスト教に改宗する人が増えていて、それに対する危機感もあるという。
 二十一世紀の最大の出来事は、中国とインドという十億を超える人口を擁する国が経済発展を加速させることではないか。それは、一方で人類の富の増進であり、一方で地球の危機でもある。アラハバードの小さなホテルで開かれていたデジタル・エキスポに、韓国のLGとサムスンの二社が出展し、日本からは東芝だけなのが少し心配だった。
 カーストはある意味で膨大な人口に仕事を与え、飢えないようにさせる仕組みでもあろう。しかし、経済発展はそれを崩し、格差をさらに拡大させる。その力は到底宗教の及ぶものではない。では宗教は無力なのかと、改めて問う必要がある。
 
宗教を生きる
 一緒に旅をした僧が「インドでは人々が宗教を生きている」と言ったのが印象的だった。宗教なしに生きられないような社会だからだろう。しかし、ブッダが語ったように、人間の四苦八苦は豊かさによってなくなるものではない。どんな時代でも、社会とのかかわりを見失った宗教は、やがて存在意義を失うであろう。

クョスコニョ    [1] 
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