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  平成19年3月5日号社説
 

「縁」のある都市づくり

 昨年、東京都が二〇一六年の五輪の開催候補地に名乗りを上げ、「東京大マラソン祭り」の開催など、実現に向け環境づくりに努めている。石原慎太郎東京都知事は「都市文明の英知と日本の技が結集したオリンピック」をテーマに、「成熟した東京の姿を世界に明らかにしたい」と気炎を吐く。一九六四年の東京五輪は「平和の祭典」を掲げ、戦後、国際社会に復帰した日本が平和国家として歩む姿を世界に示し、大成功を収めた。それは四〇年の五輪誘致が決定しながら、参加拒否の国が相次ぎ、開催を返上せざるを得なかった幻の東京五輪の反省から、実現したものだった。その折、東京都の職員として各国との折衝に当たった一人が、後に型破りな都市学者となる磯村英一さんだ。
 
 もやいの会
 「人間は縁のなかに生き、生活を送る。その関係が、現世だけでなく、未来永劫につづく。地球上の文化はその現れであり、大都市の繁栄もその姿の一つである。この碑は、その縁を永遠に語り合う『もやいの場』のしるしであり、同時に、大都市・東京が、平和と自由と友情の場であることの証でもある」
 これは、東京・巣鴨にある平和霊苑の一角に建てられた「もやいの碑」に刻まれた磯村さんの文。「もやいの会」を提唱し初代会長を務めた。もやいの会とはいわば身寄りのない人たちの互助会で、生前に会員となり親睦を深め、死後の葬儀や財産処分などを仲間に行ってもらう仕組み。同会のホームページには「『無縁になったお骨をどうする?』ということでなく、生前に『死後の住みかを共にする仲間』作りを通じ、お墓を中心としたネットワーク作りを目指しています」と書かれている。
 磯村さんが同会の設立を提唱したきっかけは、戦後間もなく都民生局長をしていた時に、行き倒れになっていた老婦人を保護したことだ。
 「助け起こそうとすると、『勝って来るぞと勇ましく…』と歌い出すのです。(中略)こんな厳粛な気持ちになったことはありませんでした。彼女は一年後に亡くなり、ただ一人の縁者として供養塔に埋葬するのに立ち会った私は、『こんなことがあっていいのか』と、憤りを感じました。身元がわからない遺体は、市区町村の費用で荼毘にふされて『無縁仏』を扱う寺の供養塔に合葬され、墓誌には何も刻まれなかったからです。
 この体験は、その後も私のなかに、『新しい形の墓をつくりたい』という情熱になって生き続けました。(中略)『もやい』は、亡くなってから皆が集う場ではなく、恊カきているときから、仲良く、助けあって暮らしていきたい揩ニ考えています」
 磯村さんの都市学は人間の住まい方の学でもあった。例えば、東京五輪に向けて建設された首都高速道路の下に隠された日本橋に青空を取り戻す提案もしている。「日本橋と上野の西郷さんは東京人の心のふるさと」と言う磯村さんは、高架道路の陰になった日本橋の姿を嘆き、二十一世紀の東京のルネサンスには日本橋の景観回復が不可欠だと説いていた。ちなみに昨年度の国土交通省の予算で、そのための調査費が計上された。
 港区の区議に区政の課題を聞いたところ、「災害時に、独り暮らしの高齢者や近所付き合いのない若者たち、それに外国人たちにどう情報を伝え、適切な行動を取らせるかだ」と言う。昼間に大地震が起こると、大量の帰宅難民が生じることも予想されている。
 
 大都市での実践を
 「成熟した東京の姿」に必要なのは、何より失われた人々の「縁」の回復ではないか。大都市は匿名性という大きな魅力で若者たちを引き付けてきたが、その結果、東京砂漠といわれるような無機質な居住空間を形成してしまった。孤独に死を迎えた人が、事後に発見されるケースも相次いでいる。こうした状況を解決する道筋の開発は、世界の大都市にとっても朗報となるだろう。
 近年、大都市での布教に力を入れている教団・宗派もある。人々の縁を作るのは宗教の大きな役割であり、とりわけ大都市での実践が必要ではないか。

クョスコニョ    [1] 
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