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  平成19年5月20日号社説
 

飛鳥の里をめぐり

 五日号の「天地」で書いた飛鳥の里について、もう少し触れておきたい。万葉集で「飛鳥(とぶとり)の明日香の里」と詠まれたように、飛鳥は「あすか」の枕詞。それが明日香村一帯の地名になった。耳成(みみなし)山より南、畝傍(うねび)山より東の飛鳥川流域をいう。五九二年に推古天皇が豊浦宮(とゆらのみや)で即位してから八世紀初めまでの帝都で、欽明天皇はこの地で仏教を受容した。日本古来の文化と渡来文化が融合しながら王権を形成していった地である。
 
渡来文化と融合
 飛鳥は大和(奈良)盆地の南に位置する。そこから北に向かうと、背後には吉野の山があり、東には御神体の三輪山を含む大和高原が、西には二上山(ふたかみやま)や葛城山のある生駒・金剛山地が見える。つまり、悠久の古来より日本の神々が息づいてきた地である。古代日本の王権が天皇家に集約されていった背景には、祭司としての宗教性の強さがあった。最初の王権は飛鳥の北東隣に当たる磐余(いわれ)で成立する。美術史家の上原和(かず)氏は名著『斑鳩の白い道のうえに』で次のように書いている。
 「それ(磐余が軍事上の拠点であったこと)にもまして重要なことは、この磐余一帯が、大和の土着信仰の、いわばメッカの地であり、この宗教的聖地を押えることによって、大和、ないしは大和と同一宗教的文化圏にある畿内一円、さらにはその隣接の地方をも、容易に掌中に収めることができたからではないだろうか」
 その上で、同氏は「こうした、呪術の支配する神々の世界から、はたして、厩戸のような人物が生まれえたであろうか」と疑問を呈する。厩戸(うまやど)皇子・聖徳太子が生まれたとされる橘寺は飛鳥にある。その飛鳥は多くの渡来人が住み着き、「おそらく、厩戸は、日常の会話のなかで、高句麗語や百済語が話される、そうした環境のなかで、育っていったはずである」(同書)と。つまり飛鳥は日本文化と渡来文化の融合の地だった。高松塚古墳の近くにある高松塚壁画館には原寸大のレプリカが展示されている。そこに描かれていたのは高句麗時代を思わせる服装だった。
 百済の聖明王が欽明天皇に仏像と経文を贈ったのは五五二年。その背景には新羅との戦いで日本の支援を得たいという理由があった。仏教伝来は、その前の五三八年とされる。その仏教を欽明天皇は蘇我氏に与え、物部氏との戦いに勝った結果、仏教は天皇家にも受け入れられていく。厩戸は蘇我氏の血縁に生まれ、皇子時代に物部氏との戦いに参加している。その蘇我氏の氏寺として建てられたのが日本最古の飛鳥寺だ。
 蘇我馬子が建立した当時は法興寺または元興寺(がんごうじ)と呼ばれていた。飛鳥寺と称するようになったのは江戸時代から。今は真言宗豊山派に属し、本尊は「飛鳥大仏」と通称される釈迦如来。本来は釈迦三尊像だったという。奈良・東大寺の大仏より百五十年も古く、その顔は面長で、大陸系の風貌だ。
 発掘に基づく創建時の想像図が本堂に掲げられていた。塔を中心に東・西・北の三方に金堂を配し、その外側に回廊をめぐらした大伽藍で、蘇我氏が百済系の技術者を大量に動員して建立したという。当時の仏教は一つの宗教というより、先進的な外来文化そのものだった。そうした外来文化の刺激に満ちた環境で聖徳太子は育ったのである。
 
太子一族の悲劇
 上原氏は、「飛鳥の道で、いつも、私が思い描く厩戸のイメージは、白い埃を舞上がらせて疾駆する馬上の太子であった。私の眼前には、剛毅果断な、厩戸の凛々しい、精悍な、陽に焼けた相貌(かお)だった」と同書に書いている。つまり、かつての一万円札に描かれたような柔弱な肖像ではない、と。実際、太子は従来の反新羅外交を転換し、新羅との関係を修復するなど、政治家としても手腕を発揮していた。
 しかし、仏教によって描いた理想を政治に実現させることを願いながら、途中で挫折し、太子の一族は悲劇的な運命をたどる。宗教と政治の非情な歴史を秘めながら、飛鳥の里は静かにたたずんでいた。

クョスコニョ    [1] 
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