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  平成19年9月20日号社説
 

国民の在り方とは

 今年四月の統一地方選挙で、知り合いの大学教授が生まれ故郷の村の村長になった。林業が衰退し、過疎が進み、膨大な借金を抱えているにもかかわらず、役場の職員数は県平均の一・七倍だという。彼は「支持者の子供を役場に採用しない」ことを公約の一つにし、僅差で当選した。最初の訓示で彼は「村民の奉仕者」となるよう職員に訴えたという。同じような状況は、全国の自治体にある。年金をめぐる問題はその一端にすぎない。
 
 成功体験が失敗に
 司馬遼太郎は、明治の官僚は驚くほど清潔だった、と言う。それが短期間での近代的な国民国家形成を可能にした大きな要因だ。その背景には、「天皇の官僚」という精神的支柱と国を背負う公僕としての気概があった。政府も、国の中枢を担う人材を育成するため、軍人や教師、官僚を育成する学校は無料にし、広く人材を集めた。かつての賊軍の、しかも貧乏士族の子弟が、それによって国を支える人材となったことは、先回触れた『坂の上の雲』に描かれている。もし、秋山好古(よしふる)、真之(さねゆき)兄弟がいなくても、それに代わる人材は現れたに違いない。そんな若い時代の日本を、もう一度見直すべきだろう。
 かつて、山本七平が「昔陸軍、今総評」と言ったことがある。イデオロギーは対極だが、自己保身的な組織の論理は類似していたからだ。日露戦争で勝った陸軍は、以後、それ自体の存続が目的となり、政治まで思い通りに操って、自己過信から勝つ見込みのない戦争を始めてしまった。司馬の言う明治のリアリズムは、それを最も必要とする軍において失われたのだ。
 総評に代表される戦後の組合は、高度成長期においては、労働者の権利を守る組織としてそれなりの役割を果たしてきた。しかし、社会保険庁職員のあきれるほどの労働慣行で明らかなように、次第に自分たちの利益を守ることが目的となってしまった。
 官僚にしても、戦後は「国民の官僚」となったが、復興期から高度成長期にはあった気概が、自分を第一とする戦後教育や経済優先の風潮から、自分と自分を守ってくれる組織を第一とするようになった。公僕ではなくなったのである。
 そうした風潮は民にも蔓延し、企業でも組織の硬直化や官僚化が目立つようになる。常に市場で評価される企業では、自己改革のベクトルが機能するが、そうした要因のない組織、例えば旧国鉄や同族会社などにはそれが欠ける傾向がある。あるいは、宗教団体もその一つかもしれない。
 司馬が『坂の上の雲』を書いたのは一九六八年から七二年にかけてで、六八年は明治維新から百年、敗戦から二十三年で、明治で言えば憲法発布の年に当たる。戦後復興から東京五輪を経て高度成長期を迎えていた当時、日露戦争は悪い戦争ではなく、明治国家という国民国家を支える「国民の戦争」だった。あなたたちは、国民を豊かにする高度成長を回している主役だ、という『坂の上の雲』のメッセージは、国家を支えて働くビジネス戦士たちに大きな自信を与えた。
 しかし、司馬が小説で、自己過信に傾いていく陸軍への懸念を随所に書いているように、高度経済成長の結果、すべてが金銭で換算され、経済的な利己主義が蔓延するようになったことを、晩年の司馬は最も嘆いていた。成功の後の失敗が、繰り返されたのである。自分がどれだけ人や社会の役に立っているかより、いくらの収入になるかが最大の関心事になった。しかも、政治がそれを助長している。
 
 欲望の抑制へ
 明治の、日本がまだ若くて小さな国だった時代の日本人のことを考えると、国民の在り方について反省させられることが多い。豊かさの両面を知った私たちは、これから長く続く少子高齢化で低成長の時代、生活のレベルを切り下げることも真剣に考えないといけないだろう。欲望を抑え、地域で支え合うようにしないと、地域も地球も持たない。こうした閉塞の時代にこそ、宗教にはビジョンを提示する責任があるのではないか。

クョスコニョ    [1] 
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