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  平成19年12月5日号社説
 

昭和天皇、敗戦からの勝利

 東京・立川市の国営昭和記念公園に昭和天皇記念館がある。その資料展示や昭和天皇のビデオ作成に関わったノンフィクション作家、保阪正康さんの近著『昭和天皇、敗戦からの戦い』は、昭和天皇とマッカーサーとの関係に新たな光を当てて興味深い。同書を読んで改めて気付いたのだが、一九四五年九月二十七日、昭和天皇とマッカーサーが初めて会見した時、天皇は四十四歳、マッカーサーは六十五歳だった。著者は特に指摘はしていないが、二人の関わりを「戦い」と見た場合、この二十年の年の差は大きい。老境の支配者に対し昭和天皇が壮年の君主だったことが、日本の幸運と言えよう。
 
マッカーサーとの黙契
 戦争末期、天皇の元に大本営からほとんど情報が上がってこない状況になっていた。立憲君主として、政治・軍事の当局者が決定したことには従う姿勢を取ってきた昭和天皇だが、こうした事態に「天皇制下の軍事主導体制」放棄を決意した、と保阪さんは推測する。それに代えて、日本を「天皇制下の民主主義体制」に移行させようと考えた天皇の戦いは、それを最高権力者のマッカーサーに認めさせることだった。
 一方、マッカーサーは、自身の最後の仕事となるであろう占領下の日本改造を、何とか成功させる道を探っていた。確かに戦時中の日本研究から、天皇制を利用することが占領政策に有利なことは分かっていたが、自分の目で現実を見て対応するのが軍人の常である。そのマッカーサーに昭和天皇が好印象を残したことで、敵対関係にありながら、二人は「同志」のような関係になる。これを保阪さんは「昭和天皇とマッカーサーの黙契(もっけい)」と書いている。
 マッカーサーの回想録には「天皇との初対面以後、私はしばしば天皇の訪問を受け、世界のほとんどの問題について話し合った。私はいつも、占領政策の背後にあるいろいろな理由を注意深く説明したが、天皇は私が話し合ったほとんど、どの日本人よりも民主的な考え方をしっかり身につけていた。天皇は日本の精神的復活に大きい役割を演じ、占領の成功は天皇の誠実な努力と影響力に負うところが極めて大きかった」とある。いろいろな意味で批判される「戦後民主主義」だが、それは「天皇とマッカーサーの黙契の結果ではなかったか、いやこの時期に制定された憲法を含めて天皇がつくり上げたのではないか、とわたしには思えてならない」と保阪さんは言う。
 「日本の民主化」で一致した二人の会見は実に十一回に及んでいる。日本政府の機能が不全の状況下、昭和天皇にとってマッカーサーは最も信頼できる世界の情報源でもあった。世界が米ソ冷戦構造へと移行していることも、それによって占領政策が変化することも、天皇は理解していたと思える。もちろんその理解は、天皇の側近から吉田茂首相をはじめ政府首脳にも及んでいただろう。それにより、むしろ日本は米国の占領政策を主導するようになった。つまり、昭和天皇の「敗戦からの勝利」である。保阪さんは「君主が支配者を籠絡(ろうらく)した」と露骨に書いている。
 それが明らかに分かるのは、トルーマン大統領によって解任されたマッカーサーが帰国前に昭和天皇と会見した、最後の十一回目の駆け引きだ。マッカーサーは空港での見送りを希望したが、天皇はこれまでどおり米国大使館での会見で済ませた。保阪さんは「天皇にとってマッカーサーが同志である関係は終わったのである。後任のリッジウェー中将をいかに宮中に招くかを考えていた節がある」としている。
 
祭司としての天皇
 昭和史、とりわけ大東亜戦争をめぐる歴史認識や判断で保阪さんの仕事はかなり信頼できるが、物足りなさを感じるのは祭司としての天皇に踏み込まないことだ。それは、語られ書き残されるものではないが、天皇の意識の大きな部分を占めているに違いない。それを、天皇制の呪術的側面として切り捨ててしまうと、歴史における天皇の実像が見えなくなるのではないか。近代合理主義だけでは理解できないのが、日本の天皇制、天皇という存在である。蛇足ながら付け加えておきたい。

クョスコニョ    [1] 
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