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  平成19年8月5・20日号社説
 

宗教対話と日本の役割

 比叡山宗教サミットの三日、ボスニア・ヘルツェゴビナから招かれたアドナさん(12)が「未来」をイメージして描いた絵は、キリスト教の教会やイスラームのモスク、ユダヤ教のシナゴーク、仏教のお寺が橋でつながれたものだった。「橋はつながりを表すシンボルのつもりです」と彼女は語る。九〇年代に内戦が起こり、宗教や民族間の対立から民族浄化の悲劇を招いた同国から招かれた七歳から十三歳の少女四人は、今回の集まりに一つの方向性を示していた。
 
ボスニアの子供たち
 彼女たちは今、米国のクエーカー教の援助により二〇〇〇年、ボスニアに設立された、人々が宗教や民族を超えて集まる共同農園、コミュニティー・ガーデンで暮らしている。現在、同国には十四のガーデンがあり、二千人が参加して、戦前のように民族の異なる人たちが交流しているという。人々は土地を借り、野菜の種や農機具、肥料の支給を受け、無農薬で野菜を栽培している。そこでは、共に畑を耕すことで友情が生まれ、戦争中は敵同士だった元兵士たちが一緒にチェスを楽しみ、戦争で子供を亡くした母親たちは、互いに慰め合っている。
 そうした様子を、同ガーデンのダヴォリン・ブルジャノビッチ氏が報告した。ともすれば声を張り上げがちになる宗教指導者らの中にあって、その控えめな語り口はむしろ新鮮で、真実に満ちていた。
 同国では戦前、ボスニア人、セルビア人、クロアチア人の三つの主要民族と、イスラーム、セルビア正教、カトリックの三つの主要宗教集団が平和に混住していた。かつては民族や宗教でなく、個人の価値観が尊重されていたので、異民族間の結婚や友情はいくらでもあった。それを一部の指導者が、民族と宗教を使って人々を戦争に駆り立てたため、戦後は宗教や民族が個人の価値観より重要になってしまったという。
 ガーデンを支援しているクエーカー教は、十七世紀にイングランドでジョージ・フォックスによって設立されたキリスト教神秘主義の団体で、質素な生活や良心的戦争拒否などの平和主義で知られ、一九四七年に系列のアメリカフレンズ奉仕団とフレンズ協議会がノーベル平和賞を受賞した。
 サミットには、カンボジアで現地語の絵本作りや図書館活動を通して子供たちの心の成長を応援しているシャンティ国際ボランティア会専務理事の秦辰也師の報告もあり、全日本仏教会もインドで子供の教育や医療支援活動を行っている。
 どんなつらい体験をしても、その日から人々は生きていかなければならない。自分の命もそうだが、愛する家族、とりわけ子供のためには、自分を犠牲にしても尽くしたいと思う。その気持ちをもう少し広げて、次の世代のためのより良い社会づくりを、目的として共有できるようにしたい。
 日本に世界のような厳しい宗教対立がなかったのは、いろいろな民族や宗教が渡来する、自然に恵まれた極東の島国という地理的要因が大きいだろう。そこで、神道、仏教、儒教を主な源泉とする宗教の習合、棲み分けが進んだ。一つの宗教が覇権を握り、国教というものが生まれることはなかったから、相対的に宗教は政治の下位にある。とりわけ近代化以降、その傾向は強く、各種世論調査によると自覚的信仰を持つ人は国民の30%くらいという。これを宗教軽視と嘆くか、それとも宗教に寛容と評価するか。
 
新しい価値を発信
 まだ上層部だけだが、主要教団が参加して宗教対話の集会が開けるのは日本くらいという杉谷義純師の話は興味深かった。海外からの参加者が、それに希望を感じてもらえれば、地球温暖化防止をめぐる京都議定書のように、新しい価値を世界に発信することができるかもしれない。あたかも、比叡山が日本仏教の創始者たちをはぐくんだように。
 大切なのは小さな実践を始め、継続することだ。日本人の宗教性が何かなどは、その中で一人ひとりが考えればいい。ボスニアと広島の子供たちを見ながら、そう思った。

クョスコニョ    [1] 
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