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  平成19年10月20日号社説
 

心癒やす仏の調べ

 作詞作曲家の遠藤実さんは十歳のころ、父の実家がある新潟県の農村に疎開したという。以下は、十月二十九日、全日本仏教婦人連盟大会の記念講演で聞いた話から――。そこで小学校の女性の先生が、オルガンを弾きながら教えてくれた「朧月夜」が遠藤さんの歌心を目覚めさせた。「菜の花畑に入日薄れ……」の通りの風景が目の前に広がっていたからだ。歌は疎開児童の孤独を慰めてくれ、自然を友と思えるようにしてくれた。まさに歌が遠藤さんの心を耕し、育てたのだ。
 
 声明から演歌へ
 かつて全共闘のイデオローグだった都市学者の羽仁五郎が、作家の五木寛之さんに「美空ひばりは日本の恥だよ」と言ったという。いかにも貴族趣味のインテリ左翼らしい言葉だと、五木さんは語っていた。明治以来の文明開化の中で、日本の知識層にはどこか日本の伝統文化をさげすむ風潮があった。それが宗教軽視にもつながっている。
 しかし、敗戦に打ちひしがれた日本人を元気づけたのは、並木路子の「リンゴの歌」であり、岡晴夫の「東京の花売娘」だった。十四歳で学校をやめ、紡績工場に就職した遠藤さんは、巡回楽団の公演が会社であった時、のど自慢で「東京の花売娘」を歌い、初めてうまいと褒められ、それならと楽団の歌手になったのが、音楽人生の始まりだった。
 母校の小学校で歌のお披露目をすることになり、精一杯歌ったところ、地元の名士らから祝儀袋が八枚届いた。しかし、開けてみるとお金は入っていない。不思議に思った遠藤さんが金封の文字を見ると、それは父親の筆跡だった。歌手になるのには反対の父だが、息子の晴れ舞台を景気づけようと用意したものだった。もっとも、その楽団は三カ月で解散となり、以後、東京に出て、ギターの流しをしながら苦労することになる。
 モーツァルトはメロディーが天啓のように湧いてきて、それを慌ただしく書き写したという。遠藤さんも十歳のころから、メロディーが自然に浮かんできて、知らないうちに口ずさんでいた。もし、そのころ楽譜を書けていれば、これまでに何千曲と作ったどの曲よりも純粋で美しかったに違いないと残念がった。今なら、パソコンに向かってメロディーを口ずさむと、音声認識で楽譜に変えてくれるソフトもある。
 私たちも、気分のいい時など自然にメロディーを口ずさむことがある。おそらく、人間の心はメロディーに乗せると表現しやすいのだろう。あるいは、心そのものが何らかのリズムなのかもしれない。
 そんなことを考えるのは、六面の「人」欄で紹介している水原夢江さんに声明の詳しい話を聞き、その一部を唱えてもらったからだ。インドの古い音曲が仏教と共に中国を経由して日本に伝わり、日本民族古来のリズムと融合しながら、独特な音曲の世界を創り上げてきたという。
 声明から平曲が生まれ、続いて、謡曲、猿楽、浄瑠璃、小唄などが生まれてきた。特に塩梅(えんばい)という天台声明独特の唄い方は、今の民謡や演歌の歌いだしにも受け継がれていると聞くと、古代のメロディーが今に続いているようでロマンさえ感じてしまう。
 
 星影のワルツ
 その後、支援者と共にレコード会社を興すが、その経営に失敗した三十八歳の遠藤さんが社長の座を追われて会社から帰ろうとした時、そこに居合わせたのが高田好胤薬師寺管長(当時)だった。高田管長に「『星影のワルツ』は遠藤はんがお作りになった歌ですか?」と聞かれ、「そうです」と答えると、管長は合掌し、「あれは仏の調べです。あの歌でどれほどわが心が癒されたことか……。どうぞこれからも頑張ってください」と言われたという。その一言が遠藤さんに再起への勇気を与える。
 歌を作る人、歌う人、聞く人、それぞれが重い人生を背負っている。いい歌が多くの人の心を揺り動かすのは、共鳴させるリズムや言葉があるからだろう。そんな歌と大衆とのかかわりは、仏陀の時代も今も変わらない。

クョスコニョ    [1] 
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