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  平成19年11月20日号社説
 

命を真剣に生きる

 靖国神社崇敬奉賛会主催第九回公開シンポジウム(1面)での野口健さんの話が感動的だったので、もう少し紹介しておこう。エベレスト登山で何度も死ぬような思いをした野口さんは、靖国神社遊就館に展示されている戦没学徒らの手記がよく理解できるという。死に直面した時、人間は共通の思いに駆られるのだろう。
 
 死と背中合わせ
 これまでエベレストには千人強が登り、そのうち三百人強が死亡している。高度七、八千メートルの地点には、あちらこちらに遺体が横たわっているため、死を意識せざるを得ないという。今年四月から五月にかけて、チベット側からエベレストの山頂まで登った野口さんも、下山中に仲間を失っている。山の事故の大半は下山中に起こるという。
 登頂を果たした野口さんと仲間は下山を始めたが、仲間の疲労が激しいため十分ほど休憩を取った。しかし、もう下りようと野口さんが声を掛けると仲間は返事を返さず、ゴーグルを上げると瞳孔が開いていて、慌てて人工呼吸をしたら、既に唇が冷たくなっていたという。野口さんは遺体を百メートルほど降ろしたが、それが酸素ボンベと体力の限界で、遺体の上に雪を掛けて下山したという。
 エベレスト登山というと冒険的な部分ばかりが注目されるが、考えてみると死と背中合わせの極限状態での体験なのだ。
 感覚の中で死を感じるようになると、「いよいよ駄目だ」という思いが強まり、気持ちが負けそうになる。そんな時、野口さんは酸素マスクの中で「生きて帰るぞ」と声を出し続けるという。
 野口さんがエベレストの登頂に初めて成功したのは一九九九年の二十五歳の時。しかし、ペアで登った二十三歳の英国人が、下山を始めた直後、発狂した。死の恐怖が大きくなり、コントロールできなくなったからだろう。ピッケルを振り回し、ゴーグルを投げ捨て、マスクを取ったという。二人は体をロープでつないでいるので、彼が転ぶと野口さんも一緒に落ちてしまう。ところが次の瞬間、自分でロープをほどいた彼は、ちらっと野口さんの顔を見て、頭から崖に飛び込んでいった。野口さんは、その体がとんとんとバウンドしながら落ちていくのを、今も覚えているという。
 そんな体験をしている野口さんは、映画「硫黄島からの手紙」を見て、玉砕の直前に将兵が防空壕の中で手紙を書き、穴を掘って埋めていた気持ちがよく分かった、という。
 野口さんも、ヒマラヤの八千メートルのキャンプで一人、悪天候に閉じ込められ、後四日で酸素ボンベがなくなるという時、紙切れにひたすら家族や仲間への手紙を書き、紙がなくなるとテントのマットに書き続けた。「死を前にすると非常に孤独で、とにかく今の思いを残しておきたいと思った。書くことによってつながっている安心感がどこかにあった」と言う。
 語り口は軽妙で、楽しみながら生きているような野口さんだが、そんな深刻な側面もあることを思い知らされた。それが、野口さんの愚直なまでの真面目を支えていると思われる。
 
政治に汚染される
 もう一つ衝撃的だったのは、来年の北京五輪に合わせたチョモランマ(エベレスト)開発の深刻さだ。中国はチョモランマ山頂まで聖火リレーをするため、ラサからチョモランマのベースキャンプまで道路を舗装し、ベースキャンプ周辺には民宿から定食屋、売春宿までが建ち並んでいたという。また、フリーチベットと書いた紙を持っていた米国人が、中国隊にまぎれていた公安に捕まった。かつてごみに汚染されていたチョモランマは、今や政治に汚染され始めている。
 十五日、ダライ・ラマ法王が来日、二十三日まで滞在し、法話や講演を行う。二十日には横浜での第四十回全日本仏教徒会議神奈川大会において、「信ずる心と平和」と題し記念講演した。チベットの文化を奪った中国が、その自然まで奪おうとしていることに、日本人も関心を強めるべきだろう。

クョスコニョ    [1] 
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