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  平成20年10月5日号社説
 

いのちは実感するもの

 小児科医の中村博志さんが主宰している「死を通して生を考える研究会」で、若い小学校教諭が、学校で飼育していたウサギが死んだ時のことを報告した。その死体をすぐに隠して、子供たちにはどこかへ行ってしまったらしいと話したという。また彼は、年間の予定に同研究会への参加を書いたところ、上司に「いのちの尊さを考える……」と書き直されたそうだ。参加者からは、「それでは子供たちにいのちを教えることにはならない」との声が相次いだ。でも、それが圧倒的な傾向なのだろう。
 
死を遠ざけては
 学校がウサギの死骸を隠すのは、子供たちにショックを与えまいとする配慮からだが、本当にそれだけだろうか。もっと奥を探ると、保護者からクレームが来ると困るからという本音がある。
 さらに、いのちの教育の一環として学校で小動物を飼うというのは建前で、本音ではそんな面倒なことはしたくないと思っている。だから、鳥インフルエンザが問題になった時、大量の鳥たちが学校から保健所に届けられた。
 もちろん、小動物が死ぬと、子供たちと一緒に手厚く葬り、お墓を作ってあげるという、しっかりした指導者のいる学校や保育園、幼稚園もある。生き物を飼うと死に遭遇するのが当たり前で、むしろその機会に、いのちの大切さを実感として教えることができる。子供たちは遺骸に触れ、その硬さに驚くという。問題は、既に死を遠ざける環境で育った大人たちの感性なのだろう。
 一方、年間三万人を超す自殺者や、身近な人の死の喪失感から立ち直れない人が増えているという問題がある。うつの拡大も、予想外のショックに対する精神的抵抗力のなさが大きな原因だろう。とりわけ、人生にとって最大の危機である死にどう向き合えばいいのか、多くの人が明確な回答を持たないまま、未曾有の高齢社会に突入している。
 老人福祉施設で長く働いている女性が、「世話をしているお年寄りから慰めの言葉を聞いたのは二回だけ」と漏らしていた。それは、「気持ちよかったよ」と「早く子供たちのところへ帰っておやり」で、それ以外は不満や怒りの言葉ばかりだという。これでは幸せな老後からほど遠い。
 人生のライフステージを考えると、社会活動の面では若年期から壮年期が最高で、その後は下降の一途だが、精神活動としては年を重ねるほど上昇し、死の直前で頂点に達するのが理想だろう。それに、死などという厄介な問題は、身近な人の死を何度も体験し、自分なりの思索を深めた上でなければ、とてもまともには立ち向かえない。
 では、子供には死を見せないほうがいいのかというと、そうではない。もう死の教育は始まっていると考え、子供なりに理解できる方法で教えればいい。すると、「私の記憶にあるから、死んでも生きている」というような難しいことを、子供は口にする。
 ちなみに、それを手助けするような絵本も多く出ている。中学生になると、例えば中村さんのホームページにある筋ジストロフィー患者のビデオ「僕は生きたい」などで、必死に生きようとする難病の人の話から学べることも多い。
 人間の理性や感性の発達を考えると、自分なりの死生観は十代後半で完成できるように思える。残念ながら、今はその環境がないから、多くの若者たちが自ら命を絶つのではないか。
 
宗教と家庭の役割
 その環境をつくる大きな役割が宗教と家庭にある。本来なら、家庭における宗教行事や教育で教えるのが最も自然だろう。例えば、小動物を家庭で飼っていれば、嫌でもその死に遭遇し、身近な人の葬儀に参列する機会もある。要はその時にどう教えるかだ。
 「千の風になって」の原詩は、一九三二年にドイツから米国に渡った女性の作で、興味深いことに、死後も身近な自然の中にいるという、いわば日本的なあの世観が、キリスト教社会でも受け入れられつつあるそうだ。つまり、宗教、宗派にとらわれない課題として死に向き合い、自らの思考を深めることが重要だと言えよう。

クョスコニョ    [1] 
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