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  平成20年2月20日号社説
 

地域経済への投資を

 底の見えない不況で職を失う人が急増している。その一方、地方の中小企業や農林水産業、介護施設など、これまで必要性がありながら人が集まらない、後継者がいない分野に就労の目が向いている。ピンチをチャンスに変える発想で今こそ地域に投資し、地域経済を再生していくべきではないか。安心・安全のふるさとづくりである。
 
尊徳の「報徳仕法」
 鎌倉の梅を見た翌週、小田原に足を延ばした。小田原城内も白梅と紅梅が花盛りだったが、目的はもう一つ、演劇「二宮尊徳」に触発され、報徳博物館を訪れるためである。米国人の過剰消費に依存していた世界経済のいびつさを思うにつけ、分度(収入に応じた支出の限度)を説いた二宮尊徳が脳裏に浮かんできたからだ。ちなみに演劇の観客は、小田原と栃木からの人が大半を占めていた。
 尊徳研究家の大貫章氏は、尊徳について「農政家であり、財政家であり、すぐれた土木技師であり、また、世界的に見ても第一級の哲学思想家です」(『報徳に生きた人 二宮尊徳』ABC出版)と評価している。加えて神道、仏教、儒教を融合した宗教家の側面もあり、小田原藩桜町領(今の栃木県二宮町と一部真岡市)の復興事業が藩士らの妨害で頓挫しそうになった時には、成田山新勝寺に籠もり、不動明王の前で二十一日間の断食祈願を断行している。さらに、尊徳は単に勤勉・倹約を説くだけでなく、数値に基づいた合理的な計画を立て、かつそれを実践できる徳を持つ人だった。
 桜町での成功はほかの藩にも伝わり、金次郎は相馬藩をはじめ各地の農業再生に招かれるようになる。やがて、小田原藩士から幕臣に登用され、金次郎は尊徳と名乗る。幕府から日光領の再建を任された尊徳は、その再建計画を作る過程で、弟子たちと仕法(村おこし)のマニュアルを集大成する。それが、今に伝わる尊徳の「報徳仕法」だ。報徳とは天地人の恵みに報いるとの意味。自然と共生する日本人の生き方が、尊徳により勤勉の思想として実を結んだ。
 読売新聞二月十一日号に免疫学者の多田富雄さんが、「家族と正業 生活の両輪」と題するエッセーを寄せている。人間が人間らしく生活するために大切なものが、「家族」と「正業」である、と。ところが、今はその二つとも怪しくなっている。さらに言うなら、それを取り囲む地域社会がおかしい。グローバル化のマイナス面が大きく出てきた結果だろう。
 地域経済の最たるものが農林水産業だが、高度成長前は約60%が農林水産業で働いていたのに、今では10%を切っている。その結果、日本の食糧自給率はカロリー計算で40%を割った。これを危機だと思わないのは先進国の中で日本くらいだろう。
 農林水産業の担い手が減少しているのは、賃金が安すぎるからだ。競争力のある農林水産業を育てながら、環境保全や地産地消の促進など官民挙げて知恵と金を出し合い、地域社会を活性化していく必要がある。それには、急速な少子高齢化に伴う介護や医療、保育、教育などの分野の改革も含まれよう。ある程度の若者が地域で働けるようにしないと、数年後には地域が消滅してしまう。
 自由化はいいにしても格差の拡大は問題で、正規、非正規の違いにかかわらず同一労働同一賃金で、技術を習得でき、セーフティーネットがあるような労働環境が必要だ。雇用も日本の伝統を生かす方向の中に、伝統と矛盾しない形でワークシェアリングなどを導入すべきだろう。オランダのように政府と経営者、労働組合が国民的議論を巻き起こしながら、真剣に取り組むべきである。
 
日本再発見こそ
 日本はどんな国を目指すべきか、それが国民に共有されていないことが問題の根底にあるのではないか。長い歴史の中で成立した日本の伝統は、長い歴史の中で繰り返し検証され、確かめられたものであり、持続可能な経済成長が可能な条件がその中にある。まさに日本再発見こそが日本再生につながると言えよう。

クョスコニョ    [1] 
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