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   平成20年3月20日号社説
 

光に出合い、光となる

 アカデミー賞を受賞した映画「おくりびと」の原作、青木新門著『納棺夫日記』(文春文庫)は、半分は著者の宗教論である。その結論は「神仏は光明である」というもの。映画の舞台は山形だが、原作の舞台は真宗王国の富山。親鸞は「仏は不可思議光如来なり、如来は光なり」と断言している。これを著者は親鸞の体験に基づいた言葉だとし、「あらゆる宗教の教組に共通することは、その生涯のある時点において、∧ひかり∨との出合いがあることである」と言う。
 
神仏は光明
 聖書の創世記には「神は『光あれ』と言われた。すると光があった」とあるように、神は光でイメージされやすい。イエス・キリストも「われは世の光なり」と言っている。映画「ベン・ハー」で、奴隷にされたベン・ハーにイエスが水を飲ませるシーンがあった。それを妨げようとしたローマ兵が、イエスを見て急にばつの悪そうな顔になり、黙認する。神の光に当たると、誰もその良心が目覚めるのだろう。
 青木氏によると、親鸞は『教行信証』において、釈迦が説いた教えの中でも究極の真実の教えは『大無量寿経』であると断定し、その理由について∧釈迦の顔が光っていた∨からだと説明しているという。このくだりに青木氏はいたく感動し、「親鸞の思想が、実践に裏打ちされていることを確信した」と述べている。
 道元の生涯を描いた映画「禅ZEN」も好評だが、その禅宗の立宗の基とされるのが拈華微笑(ねんげみしょう)という出来事である。霊鷲山に集まった弟子たちに、釈迦が蓮の花をひねってみせたところ、誰もその意味が分からず黙っていたが、迦葉(かしょう)一人が理解して微笑んだ。そこで釈迦は彼にだけ禅の法門を伝えたという。
 十年間、納棺夫を務めた青木氏は、「どの場面でも同じように、胸がつまって、止めどなく涙が出てしかたがなかった。死に近づいて、死を真正面から見つめていると、あらゆるものが光って見えてくるようになるのだろうか」と言う。がんなどで余命を宣告された人の多くが、「目に見えるものすべてがいとおしくてたまらなくなる」という感想を語っている。死に真正面から向き合うとき、人は自ずとそうなるのではないか。「死を通して生を考える研究会」を主宰している中村博志元日本女子大教授も、「死と向き合うことが家族関係の見直しにつながる」と言う。
 「おくりびと」は納棺の儀礼の美しさが注目されていたが、映画の主題は主人公の父親との関係回復にあるように思えた。家を出て、断絶したままになっていた父が、ある港町で行き倒れになったという知らせが届く。その納棺の儀式を行いながら、それまでぼやけていた昔の父親の顔が、次第にはっきり輪郭を現してくる。光に包まれることにより、主人公の中に拒否していた父親のイメージが蘇ってきたのだろう。
 私事で恐縮だが、社説子は胃がんの開腹手術で全身麻酔をかけられ、いわば仮死状態になったとき、その直前に青木氏の本を読んだこともあって「何か光を見るだろうか」と少し期待していた。三時間半の手術を終え目を覚ますと、執刀医が微笑みながら「成功しましたよ」と語りかけてくれた。ぼんやりした頭で、「ああ、これが光なんだ」と思いながら、安心して再び深い眠りに就いた。
 
重要なのは実践
 光に出合う体験は、みなそれぞれ持っているのではないか。強烈な神体験の人もいれば、誰かの好意という人もいるだろう。宗教者にとっては悟りかもしれない。先日、久しぶりに会った、喝破道場を開いて三十五年の野田大燈師(元總持寺後堂)は、重要なのは悟った後の実践だと強調した。同師は二十九歳で出家し、山の上に禅道場を開いて、不登校児などを受け入れる活動を始め、檀家に依存しない寺の在り方を開拓している。
 光に出合ったら、次には自分が光になる。だから、周りのすべてがいとおしくなるのだろう。その動機で実践し、それぞれの活動の場に生かしていく。そんな人の増えることが、暗くなりがちなこの国をもっと明るくしてくれると思う。

クョスコニョ    [1] 
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