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平成20年7月20日号社説 |
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中国に「和」の恩返し
七月五日、中国新疆ウイグル自治区で起きたウイグル族と漢民族の騒乱は、百八十四人もの死者を出す惨事になった。中国政府は死者の内訳を、漢族百三十七人、ウイグル族四十六人、イスラム系少数民族・回族一人と発表したが、「ウイグル族のデモに対して治安部隊が無差別に発砲したから、ウイグル族の死者の方が多いはずだ」とウイグル族の人たちは激しく反発し、激しい怒りを招いている。ドイツのミュンヘンに拠点を置く「世界ウイグル会議」は死者千人以上に上ると主張している。 昨年のチベット騒乱では反応の早かった日本の仏教界だが、ウイグル族がイスラム教徒ということもあってか、今のところ目立った動きはないようだ。しかし、根は同じ中国の少数民族問題であり、民族融和の国づくりに注目し続ける必要があろう。 国家解体の危機? 今回の騒乱の主導者として中国政府から批判されているのが、「中国のウイグル族には人間としての自由がない」と批判して二〇〇五年に米国に亡命し、国際ウイグル人権・民主主義基金を創設、ウイグルの人権問題を世界に発信しているラビア・カーディルさんだ。彼女は事業で成功し、中国十大富豪の一人となり、中国共産党員としても活躍していたが、政治協商会議の場でウイグル族の人権問題を訴えたため一九九九年に逮捕、投獄された。〇七年にはアムネスティ・インターナショナルの招きで来日し、東京はじめ全国で講演している。 ウイグル人の留学生などを受け入れている日本も、事件に巻き込まれている。一九九六年から東大大学院に在学していたトフティ・テュニアズさんが九八年、一時帰国した時に政治犯として逮捕、九九年に懲役十一年の判決が下り、投獄されたのだ。東大は中国政府に抗議、国連に訴えるなどしているが釈放の目途は立っていない。毎年、教授が服役中のトフティさんを訪ねることで、中国政府へのメッセージを出し続けているという。 人民解放軍が東トルキスタン(現、新疆ウイグル自治区)に侵攻したのは一九四九年。有力者を逮捕し始めたので、共産主義に同調しない資本家や知識人は外国に亡命した。彼らを助けたのはイスラムのネットワークで、カザフスタンやアフガニスタン、トルコに逃れ、さらにドイツや米国に渡った人もいる。 近年深刻なのは、上海協力機構で中央アジアのイスラム国家と関係を強めている中国の圧力で、周辺国が亡命ウイグル人を強制送還していることだ。トルコも安住の地でなくなったという。 騒乱の背景には、民族宥和政策の名の下で実質的には漢民族への同化政策が行われていること、自治区への投資の恩恵を受けるのは漢民族ばかりで民族間の経済格差が広がっていることへの不満がある。中国には五つの自治区があり、それら全部で国土の40%を占め、しかも多くが外国と国境を接しているため安全保障にも直結する。さらに、少数とはいえ国民国家形成に十分な人口なので、独立志向が強まると中国は解体するとの危機感がある。中国政府の頭にあるのは旧ソ連解体の後追いをする悪夢だろう。 しかし、歴史的に見て、中国を漢族が支配した期間は意外と短く、あの唐を建てたのも鮮卑という中国北部の遊牧騎馬民族だ。むしろ、周辺少数民族の活力を取り込んできたのが、中国の歴史と言えよう。 聖徳太子の思想 中国政府は三万人もの特別警察官を投入し、扇動者の密告を奨励するなど力でウイグル族を抑えようとしている。一番心配なのは、これで中国の政治改革、民主化が遠のくことだ。それは中国だけでなく、アジア、世界の将来を暗くする。 唐突との批判を承知で日本の「和」を持ち出すと、古代日本は来歴や信仰、文化の異なる部族を和の思想で調和させた。日本古来の神道に、中国から儒教、仏教などを取り入れ、和の思想に結実させたのが聖徳太子だ。その思想を明らかにし、中国の人たちに提供するのも、歴史的な恩返しになるのではないだろうか。
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