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平成20年9月20日号社説 |
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政権交代後の日本へ
九月十三日(日本時間十四日)マリナーズのイチローが大リーグ新記録恚續N連続二百安打揩達成した。自ら「重圧には弱い」と言うイチローは、毎年、百七十安打を超えるころ、「吐き気をもよおす」ほどのプレッシャーに苦しんでいたという。「自己中心なプレーヤー」と見るチームメートの視線に、孤独感を深めることもあった。イチローの強さを支えたのは、弱さへの自覚だろう。才能ある人たちの多くが、その強さの故に自滅していったことを思うと、イチローの人間洞察の深さに感心する。 安打にこだわるイチローのプレーは、米国人に古い大リーグ野球を思い起こさせたという。「日本人選手の価値を高めた」とも。結果ではなく過程に意義を見いだす、仕事や練習そのものを喜びとする生活観だ。その姿は、これからの人口減少社会における私たちの生き方を示唆しているようにも思えた。 自由から平等へ 同じ米国では、約四千万人という無保険者をなくすことを目的に、公的医療保険制度の創設を目指すオバマ大統領が、国民の大きな反対に遭って苦悩している。彼らの主張は、公的医療保険制度は増税と政府の関与の拡大を招き、自由を最高の価値とする米国の伝統に合わないというものだ。確かに資本主義社会では平等よりも自由を尊重するが、下層の人たちが生命の危険に脅かされるまでに困窮すると、社会そのものが崩れてしまう危険をはらむことにもなろう。 自公から民主中心への政権交代は、国民や識者の間ではおおむね肯定的に受け止められているようだ。むしろ、民主主義国家としては、政権交代可能な野党の出現が遅すぎたと言えよう。その責任の過半は旧社会党にあり、社民党の福島瑞穂党首は内閣入りではしゃいでいる場合ではない。 鳩山由紀夫総理の友愛社会は、いまひとつイメージが明確でないが、小泉改革でなおざりにされてきた社会の平等性を、もう少し強めようというものだろう。例えば、先進国の中で日本は、子供や若者よりも高齢者への手当てが厚い。その世代間の不平等も、直していかなければならない。 哲学者の梅原猛さんによると、仏教には悟りと平等という二つの大きな思想があるという(『親鸞の告白』小学館文庫)。それに共鳴し、平等社会の実現を目指したのが、聖徳太子である。その太子を親鸞は「和国の教主」と呼んで、自ら後継者であることを任じた。その意味で、浄土真宗は太子教とも言えよう。 ここで重要なのは、平等の実現には悟りが必要だとされていることだ。自身が罪深い凡夫であるとの自覚がないと、他人と平等になろうという気持ちにはなれない。自分の今の立場、収入は自分自身の努力で得たもので、それを努力しない人に分け与えることなどできない。むしろ、彼らを怠惰なままにしてしまうのではないか、などと考えるだろう。平等よりも自由が優先される。 もっとも、官公労をはじめ多くの組合に支持されている民主党に、脱官僚や友愛社会が実現できるのかという疑問もある。地方では組合に守られた公務員のほうが特権階級で、そのために大分県教組のような、教育者にあるまじき犯罪がはびこったりする。鳩山総理はまず自らの弱点を自覚することから、政権運営を始めるべきだろう。 日本人の宗教性 経済が右肩上がりの時代には自由が優先されていいだろうが、これからの低成長時代には、むしろ平等の温かさが必要になる。日本民族が古来から持っていた共同体を再生させないと、人々が助け合う社会は実現されないからだ。 悟りも弱さの自覚も、日本人の宗教性である。仏教が日本化し、浄土教が最も広く受け入れられたのは、それが日本人の宗教性に合っているからだろう。世界の人たちは日本を「和の国」だと思っている。その良さを取り戻せば、二十一世紀の日本は、活気ある少子高齢社会を築くことができよう。
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