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  平成20年6月20日号社説
 

つながるいのち

 「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことでにわかに注目を集め、今年二月から四月までの二カ月で四十万部を超えるベストセラーになった『納棺夫日記』の著者、青木新門さんの講演を、山梨県富士吉田市の如来寺で聞いた。同書に書かれた宗教観が脚本には反映されていなかったため、映画に「原作」と記されることは拒否した青木さんだったが、試写会を見て好印象を持った。二月、ロサンゼルスからの「ノミネートされました」という主演の木本雅弘さんからの電話に、最澄の言葉「一隅を照らす」をひもときながら、「普遍性があるからきっとオスカー取れますよ」と話したという。
 
大切な看取り
 同書の半分は著者の宗教観、死生観で、最初は嫌々始めた納棺夫の仕事に打ち込んでいく中から悟ったものだ。死者にまともに向き合うようになった青木さんが気づいたのは、亡くなった直後の顔がいずれも穏やかなことだという。それまで苦痛に顔をゆがめていた人も、突き抜けたようなすがすがしい顔つきになっていた。
 社説子も高校二年の時、祖父の死を看取って同じような体験をした。中風で足が不自由になり、寝たきりで床ずれに苦しみ、性格もゆがんでしまったのかすぐに怒っていた祖父が、うそのように清らかな風貌になっていた。「死はすべてのものを清めるのだろうか」と日記に書いたのを覚えている。そして、小さい頃、祖父にかわいがってもらったことを思い出していた。
 講演で青木さんは、祖父母の死をめぐる二人の十四歳の体験を紹介した。一人は平成九年に神戸で連続児童殺傷事件を起こした少年A。調査官の「なぜ人を殺そうなどと思ったのか」という問いに、彼は次のように答えた。
 小学生の時、僕の大事なお祖母ちゃんが死んでしまいました。そこで、死とは一体何なのかという疑問が湧いてきました。最初はナメクジやカエル、やがて猫を殺すようになり、中学生になった頃から、人間の死に興味が出てきて、人間はどうやったら死ぬのか、死んでいく時の様子はどうなのか、殺している時の気持ちはどうなのか、といったことを頭の中で妄想するようになりました。
 他方、九州の寺でもらった元出光興産会長の石田正實氏の追悼集に、十四歳の孫が次のような文を寄せていた。
 亡くなる前の三日間、おじいちゃんのそばにいて、さびしく、悲しく、つらくて涙が止まりませんでした。その時、おじいちゃんはぼくに人の命の重さ、尊さを教えてくださったような気がしました。どうしても忘れられないのはおじいちゃんの顔で、とてもおおらかな笑顔でした。いつまでもぼくを見守ってくれることを約束してくれているような笑顔でした。おじいちゃん、ありがとうございました。
 少年Aの親は、学校があるからと彼を祖母の死に目に立ち会わせなかったが、石田少年は祖父の死に三日間付き添った。その違いは大きい、と青木さんは言う。
 詩人でもある青木さんには「いのちのバトンタッチ」という、納棺の現場で生まれた詩がある。「死に臨んで先に往く人が/『ありがとう』と云えば/残る人が/『ありがとう』と応える/そんなバトンタッチがあるのです……」。しかし、死から目をそむけていると、それが見えない。人とのつながりが見いだせないと孤独になってしまう。そんな現代人が多いのではないだろうか。
 
共同体の回復
 縄文時代の円形集落には、その中央に墓があることから、死者と共に暮らすという死生観を古代人が持っていたことが推測されている。時間軸の縦のつながりが強かったから、生きている人同士の横のつながりも強かった。そんな共同体が崩れ、個人中心の暮らし方になったのが近代であり都市だろう。
 そんな現代社会で宗教はどんな役割を果たすべきか。個人の自由や人権を大切にしてきた営みを損なうことなく、共同体の温もりを回復する手だてはないものかと思う。

クョスコニョ    [1] 
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