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平成21年6月20日号[天地] |
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御田植神事で田舞を舞った住吉大社の神楽女たちの頭には、松をかたどった飾りが付けられていた。同社が鎮座した頃、鳥居の前はすぐ海が広がっていたのであろう。日本の海岸線に白砂青松が現れたのは、米作が広まった江戸時代とされるから、神楽女の髪飾りはその頃からか。海からの風と砂の被害を防ぐため、全国の砂浜に松が植えられた。その名残で、同社境内には大きな松の木が茂っている▼では、今の海はどこにあるのか。七キロ西の大阪南港(なんこう)だと聞いて、タクシーに乗って見に行った。商店街が続いた先に倉庫群があり、やがてコンテナ埠頭が見えてきた。約二十分走って海岸線に着くと、そこは沖縄や九州、四国へのフェリー港になっていた。中国の上海や韓国の釜山への国際便もある。ちなみに北港にはヨットハーバーやコンテナ埠頭のほか、大阪市の無駄遣いハコモノの象徴とされる舞洲がある。歴史はこのように海岸線の風景を変えてきた▼昭和三十年代まで天地子も田植えを手伝っていたので、御田植神事は懐かしかった。田植えをするあねさんたちの後ろに、苗の束を投げる。近くに投げ過ぎて、泥水がかかると叱られた。合間にはあぜに大豆をまき、昼食にはうどんを食べる。田植え機が導入されて楽になったが、みんなで田植えをする必要がなくなり、やがて共同体が消えてしまった。
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