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  平成22年4月20日号社説
 

森の文明の再生を

 長野県諏訪の御柱祭の正式名称は「式年造営御柱大祭」、寅と申の年に式年祭として行われる。山中から御柱として樅(もみ)の大木を十六本(上社本宮・前宮、下社秋宮・春宮各四本)切り出し、諏訪各地区の氏子が分担して各宮まで曳行する。最後に、社殿の四方に神木として建てられる祭りで、七年ごとに繰り返されてきた。
 起源は平安時代以前とされるが、巨木を神、あるいは神の依り代とする古神道の信仰によるものだろう。そこには、縄文時代の人々の間に芽生え、仏教などと習合しながら、現代まで生き続けている、日本人の信仰の基層があるように思える。
 
和を生んだ縄文時代
 古代、多くの部族が住み着いた日本列島では、彼らの間で食料や住まいをめぐり抗争もあったに違いない。それが、長い時間を経て、次第に共存共栄の道を求めるようになり、婚姻関係も結ばれ、次第にそれぞれの神々を尊重し認め合うようになっていった。神々への信仰を中心に、原始共同体が形成されてきたのだろう。
 縄文前期(紀元前六〇〇〇年頃)になると人々は定住的なムラ(集落)をつくって住むようになった。その集落の特徴は、宗教施設、あるいは集団作業の場と思われる中央の広場にあり、それを囲んで家屋が環状、馬蹄形、あるいは向かい合った二つの円弧状に配置されていて、これは構成家庭の平等性を示していると考えられる。つまり、宗教性を中心に共に暮らす中から、日本の伝統精神の核である「和」が形成されてきたのである。
 和の思想をはぐくんだのが森の文明である。森に暮らす人々は、周りのすべての存在を神のように感じていた。そこに源流を発する神道と習合して、「山川草木悉有仏性」という本覚思想の日本仏教が生まれた。インドでは生命を認めるのは動物までだという。風土の違いは大きい。
 文明とは半面、自然破壊である。農業は原野を開拓し、自然界にはない単一作物を大規模に栽培する。そのために必要な農具は、金属の精錬技術によって作られた。しかし、金属の精錬には大量の薪を要するため、金属技術が普及した地域では森の消滅が進んだ。それらにより失われた森が回復されないまま砂漠化したのが、今の中東や中国だろう。幸い、日本は湿潤な気候と豊かな土壌に恵まれ、森は短期間で回復した。
 四月九日の本紙講演会「オランウータンに教えられて」でNPOアジア植林友好協会理事長の宮崎林司さんは、次世代の子供たちのために森を再生させる必要性を訴えた。いわば世代を超えた倫理である。住友林業の社員としてインドネシアの熱帯雨林の木を切り出していた宮崎さんは、そのため森を追われたオランウータンに遭遇し、偶然「目が合った」ことで自分の仕事に疑問を持つ。以後、退職して、森再生の会社を起こし、オランウータンの保護にも取り組んでいる。その宮 さんは「未来永劫に人類が地球で生き続ける持続可能な社会をつくることができるのは、日本人の持つ自然観しかない」と言う。その自然観とは、縄文時代に森の中で培われたものだ。
 自然は実に微妙なバランスの上に成り立っている。そこに手を加えることは、生態系全体に影響を及ぼす。例えば、日本の田舎の原風景ともいえる里山は、人々が常にそこに入ることで形成されてきた。ところが、柴を刈ることも、落ち葉を集めることも必要なくなった今、便利になった生活の裏で、里山が荒れている。日本の国土全体の保全という視点から、人々の暮らしの在り方を再検討すべきだろう。
 
現代文明のためにも
 御柱際という古代からの祭りに、数十万人もの人たちが押しかけるのは、世界的にも珍しいことだろう。氏子の人たちが運営する祭りなのだが、観光客も子綱を持って御柱を曳くことができる。お祭りする心も、そこに集う心も、日本人の古くからの信仰を今に持ち続けているように感じる。
 日本には古代、数千年にわたる森の文明の時代があったことを、私たちは思い起こすべきだろう。その再生を図ることで、農業文明や工業文明も生かされるように思う。

クョスコニョ    [1] 
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