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  平成22年9月5日号社説
 

人のために生きてこそ

 約三十年前に亡くなった親の死亡届を出さず、遺族年金を子供が不正に受給していた事件が起こり、世間をあきれ返らせたが、年金受給者の実態を調べると、さらに深刻な事態が明らかになってくるのではないか。
 戦後、先進国はどこも福祉社会を目指し、国民の暮らしを豊かにすることに国の目標を置いてきたが、どうも福祉が進むにつれて、人間の品性が落ちていくのではないかと思ってしまう。暮らしを豊かにするのなら、同時に心も豊かにする必要があったのではないか。
 
共に生きる知恵を
 先日、百三歳、九十五歳、九十二歳の元気な男性三人の座談会をしたところ、共通していたのは人のために一生懸命働いていることだった。
 百三歳の人は八十歳の時から、自分の住んでいる町でタウン紙を出し、身近ないい話を載せて、自治会を通して町民に配布し、希望者には郵送してきた。九十五歳まで続け、百六十五号まで出した。それまで記者などの経験はなかったが、年金をもらって暮らせているので、何か恩返しをしないといけない、と思って始めたという。
 九十五歳の人は、現役の四十代から小さな親切運動に取り組み、六十歳を前に創立した会社を息子に譲ると、ボランティア中心の生き方に切り替えた。会社の上場で得た資産を生かして、ボランティア団体を助成したり、高齢者と中学生のディベートを主催したり、途上国の学校建設などを支援したりしている。
 九十二歳の人は、七十五歳で会社を辞めてからオイスカの四国支部長として、主に資金集めに奔走し、途上国の若者を受け入れ、研修を行う施設を支えてきた。
 いずれも、健康や仕事に恵まれたから、そうした活動ができたとも言えるが、むしろ、人のために生きることが、彼らの健康を支えてきたようにも思えた。恵まれた人生を、自分のためだけに使っては申し訳ない、という精神性である。それこそ、宗教心の極みではないだろうか。
 八月二十八日のNHK教育テレビ「ETVワイド ともに生きる『薬物依存』」によると、インターネットや携帯などで薬物が入手しやすくなったため、今や違法薬物の経験者は約二百七十六万人に上るという。
 経験者の話を聞いてよく分かったのは、薬物に手を出してしまうきっかけだ。必要以上に自分を追い込んでしまい、その苦しさから逃れようとして。友達の仲間に入ろうとして彼らのやっている薬物に手を出す。女性の場合はやせるためなど。共通しているのは、人間関係づくりの未熟さだ。
 薬物依存から立ち直った人の話では、同じ境遇の人たちの集まりで、自分のことを率直に話せたことが大きいという。仲間から得る力の大切さ、人間関係における自己開示の重要さを示している。
 人は一人では生きていけないのに、社会の個人化の進展で、共に生きることの知恵やスキルの退化が深刻化し、薬物依存はその氷山の一角のような気がした。人のために生きることの喜びを、もう一度子供たちに教える必要があるし、その前に、私たち大人自身がそのように生きていなければならない。
 
心を満たすのは人
 人の心は自然やペットでも満たされるが、最高に満たしてくれるのは、やはり人だと思う。思い、思われる人間関係があってこそ、人は心豊かに生きることができる。
 だから日本人は、先祖は亡くなっても身近にいて、私たちのことを守っていると考えてきた。目には見えない存在を信じることが、この社会を健全に保っていたと思う。
 人のために生きることが、結局は自分のためになることを、先祖の人たちは経験的に知っていたのだろう。むしろ、共同社会はそうしないと維持できなかった。そうしたかかわり合いを、家族や地域社会につくっていくことに、意識的に取り組むことが必要な社会に、今はなっている。現代社会に宗教が果たす重要な役割の一つも、そこにあるように思う。

クョスコニョ    [1] 
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