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  平成22年10月20日号社説
 

誰のために、何のために

 十月十九日、香川県善通寺市の真言宗善通寺派総本山善通寺(樫原禅澄管長)で葬儀と墓をめぐるシンポジウムがあり、宗教学者の山折哲雄さんが次のような話をしていた。空海は死者を見送る願文を書き残している。大量の願文は、天皇から大臣、庶民までいろいろな階層に及び、死者の霊魂と縁を結ぶことによって、関係者の安寧、幸福を、天皇の場合は国家の鎮護を祈っていた。そこから、空海は即身成仏を目指しながら、現実の社会関係の中では、死と死者に関わる問題にも深い関心を持っていたことが分かる。
 これは、葬式は遺族のためにするものではないか、との質問に答えてのコメントだが、話を聞きながら、話題の本『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著、ダイヤモンド社)を思い出していた。なお、上記のシンポの内容は次号に掲載します。
 
マネジメント
 百万部を超えるベストセラーになった同書は、ある都立高校の女子マネージャーが、野球部を甲子園に出場させることを決意し、ドラッカーの『マネジメント』を読みながら部の改革を進め、不可能に思えた目標を達成する物語。著者の岩崎さんは小説を書くつもりでいたが、編集者からビジネス書にと依頼され、その要素を加味したという。
 ドラッカーは企業経営に革命をもたらした経営学者、社会学者だが、その理論は企業のみならず非営利活動法人や自治体、宗教団体をはじめ家族などあらゆる組織の運営に応用される価値を持っている。端的に言えば、人を生かす組織の作り方で、その要は顧客の創造にある。
 考えてみると、これは当たり前のことで、人は誰しも自分が幸福になることを願っているが、それは何らかの人間関係を通して実現される。つまり、関係性を重視しながら個の目的を目指すのが、人としての生き方の基本となる。社会的動物である人間の宿命とも言えよう。
 ドラッカーはマネージャーに必要な根本的資質として「真摯さ」を挙げている。多くの人と向き合う真面目さと言ってもいいだろう。同書の主人公は友達の女子高生と協力しながら部員たちや監督の話を聞き、彼らの本当の願いを知り、それを実現する組織作りに取り組む。
 その際、重要になってくるのが、何のために組織があるのかだ。企業の場合は顧客のためだが、野球部のような組織にもそれは当てはまる。しかも、その場合の顧客には、観客や級友、家族だけでなく、部員自身も含まれる。つまり、誰かのためにある自分を意識することで、自らの役割が明確になるということだ。そして、彼女らは「野球部のするべきことは顧客に感動を与えること」だと気付く。
 主人公はそれに基づいて主将選びの人事や目標設定を行い、感動的な試合をするため、「バントをしない」「ボール球を振らせるような投球をしない」野球を目指すことを決めた。
 面白いのは、組織の目標の一つに社会貢献があるという教えに基づき、他の部や地域との交流を進めたこと。陸上部に走法の指導を受け、音楽部に応援歌のアレンジを依頼、地元の少年野球を指導するなど。おかげで試合の応援はどの高校よりも賑やかになった。
 
自己実現と関係作り
 同書は都立高校が見事、甲子園出場を決めたところで終わっている。内容の平易さと普遍性から、既に海外での翻訳出版も進んでいる。共産党の一党独裁が続く中国でどう読まれるのか、興味が湧く。
 宗教は究極の自己実現を目指すものだが、歴史的には、死者を含めた関係作りとして発展してきた。釈迦も親鸞も、その遺言とは違う形で遺体が扱われ、後世まで弔われている。そこからも現代における宗教の在り方を考えたい。

クョスコニョ    [1] 
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