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  平成22年12月5日号社説
 

心を豊かにするもの

 十一月二十七日、島田正吾七回忌追悼公演をうたう東京での「平家物語の夕べ」を観た。主催したのはNPO法人・原典「平家物語」を聴く会(橘幸治郎代表)。冒頭の「祇園精舎」を岩佐鶴丈さんが琵琶を弾き語り、「祇王」は平野啓子さん、「六道之沙汰」は木美智子さん、「維盛」は近藤正臣さんの語りで、「大原御幸」と「女院死去」を島田正吾さんの映像出演で聴いた。
 「潅頂巻」は、平清盛の娘で高倉天皇の皇后になった建礼門院の物語。壇ノ浦で海に身を投げたにもかかわらず、源氏の兵に髪の毛を熊手にかけて引き上げられ、生き残ったことで、平家一門の鎮魂を一身に引き受けることになる。
 
供養の思い
 『平家物語』の最後にある「潅頂巻」は、南北朝時代の琵琶法師・覚一によって確立されたと言われる。覚一は足利尊氏の従弟で、中年まで播州書写山円教寺の僧であったが、失明して琵琶法師になった。琵琶の名手で、耳なし芳一のモデルともされている。
 潅頂は、仏法の秘伝を受けた印に頭に水を注ぐ儀式で、水死者に対しては流水潅頂が行われる。最後の巻を潅頂と名付けたのは、水をくぐった建礼門院が、その多くが水死した平家一門の供養をするとの筋書きからであろう。つまり、供養が主題である。
 『平家物語』の原作者は不明だが、仏法の布教を目的とする琵琶法師らの語りによって広まり、伝えられてきたため、その過程でいろいろな脚色が加えられてきた。それらをまとめた覚一本がスタンダードとされる。
 平家の人たちは壇ノ浦で源氏に敗れ、建礼門院の母・二位の尼は孫の安徳天皇を抱いて海に沈む。建礼門院も入水したが、源氏の兵に助けられ、その後、京都大原の寂光院に身を隠す。そこを後白河法皇が訪れるのが、「大原御幸」で、この時、女院が法皇に語った彼女の一生が「六道之沙汰」である。
 六道とは、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道のことで、女院は生きて六道の世界を見たと語る。平清盛の娘として生まれ、皇后となり女性として最高位に達し、さらに天皇の母となった。そこから転落することで、女性として体験するすべての栄光と悲惨をわが身で歩んだのである。
 供養とは亡くなった人を思い、死後の幸福を祈ることである。それは、共に生きた人を死後も思い続けることで、一部は動物にも見られるが、最も人間らしい行為であり、宗教が発生する基盤とも言えよう。
 供養の心が人々の心を耕し、生きる意味を豊かにしてきた。とりわけ悲しみを体験することで人への理解が深まり、人のために生きる喜びが、人生や歴史を味わい深いものにしてきた。人間の本性にあった供養の心に共振して、仏教は日本に広まったと言えよう。それらが日本人の優しさを培ってきた。
 好評の大河ドラマ「龍馬伝」が終わり、来年は「江〜姫たちの戦国〜」で、江は浅井三姉妹の末娘。自刃した父・浅井長政は後を追おうとするお市の方と娘らを制し、自らの菩提を弔い、血を残してくれるよう頼む。それが姉妹の生きる目的となった。坂本龍馬や「坂の上の雲」の秋山真之ら男たちは、「一身独立して一国独立す」を目指したが、女たちも別の道で国づくりをしてきたのである。
 
良いお年を
 死者が出るかもしれないのに無慈悲な砲撃ができるのは、それを命じる人に、人を思う心が欠けているからだろう。当面はそれを防ぐ具体的な対策が必要だが、長い目で見れば、そんな国の人たちにも慈悲の心が伝わるようにしたい。国が豊かになるには、経済だけでなく人々の心の開発が大事だからだ。
 「女院死去」を語る島田正吾さんの映像は、焼失前の寂光院で撮影されたものだった。八十八歳という年輪を重ね、芝居で鍛えられてきた声は奥行きがあり、しかも明瞭で、建礼門院の最期を慈しむように語っていた。皆さま、良いお年をお迎えになりますよう。

クョスコニョ    [1] 
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