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平成22年7月20日号[天地] |
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七月十日、富士宮の白糸の滝を見た。数日来の雨で水量が増し、滝の左の端は、糸と言うより布。大型バスから降りてくる観光客には中国人と修学旅行生が多い。土産屋で名物の焼きそばを食べた。富士宮やきそば学会があるほど、当地は焼きそばにこだわっている。指定された麺と油かすを使い、仕上げに削り粉を振りかけるのが特徴。確かにうまかったので、富士山本宮浅間大社前のお宮横丁でも食べた▼熊野で開かれた神社本庁伝統文化セミナーに参加した動機も、この時期なら豪快な那智の滝が見られること。期待通りで、火祭りの当日は小雨程度だったことにも恵まれた。白糸の滝では我慢したソフトクリームを、長い石段を登ったことを言い訳に食べる。濃厚な牛乳の味に、黒蜜の甘さがからみ、疲れを癒やしてくれた▼新宮への旅の余禄は中上健次。図書館に彼の資料室があり、生家跡や墓のことなど、若い女性が詳しく教えてくれた。天皇の歴史を陰で支えた人たちと文化を、彼の作品は語っている。働きながら小説を書いていた時代の、集計用紙にびっしり書かれた下書き原稿の字が、意外に整っていたことに、破天荒な生き方をした彼の、生真面目な実像を見る思いがした。彼が始めた熊野大学は、二世代を経て今も受け継がれており、今年は瀬戸内寂聴さんが記念講演に来る。中上健次の小説も、読み返してみたくなった。
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