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  平成23年6月20日号社説
 

震災復興にスピードを

  十万人以上の焼死者を出し、江戸の町の大半を焼き尽くした明暦の大火(明暦三年=一六五七年)の折、幕閣にあって将軍徳川家綱を補佐していた保科正之(会津藩主)は、家を失った町民に、間口一間につき三両一分の計算で合計十六万両もの救助金の支給を即決した。「それでは御金蔵が空になってしまう」と反対する閣老たちを、「官庫の貯蓄はこのような時に下々に施与し、士民を安心させるためにあるものだ」と一喝したという。
 震災からの復興には何よりスピードが求められるのに、政治責任を果たすよりも政局に時間を費やし、遅々とした歩みしかできない今の政治家たちに聞かせたい話ではある。
 
民生安定を第一に
 保科正之は放映中の大河ドラマ「江」の主人公の夫・徳川秀忠が、江の目を盗んで別の女性に産ませた子供。秀忠の乳母を務め、その後も大奥に住んでいた老中・井上正就(まさなり)の母付きの女性・お静が母で、大奥で秀忠に見初められた。正室の江は、ドラマ通り気が強く、夫より六歳年上で嫉妬深く、秀忠は側室を持つことができなかったから、唯一の例外が正之である。
 江の耳に入ると危険なので、お静は城を下がり、兄の家で出産した。ちなみに、正之は二人目で、最初の子は中絶している。正之も降ろされかけたのだが、弟が将軍の子を二度も流しては天罰が当たると主張、一族も承知し、たとえ発覚して義絶されてもとの覚悟で産ませたという。
 それを助け、子に危険が迫ると引き取って育てたのが武田信玄の次女・見性院(けんしょういん)と妹の信松院(しんしょういん)で、武田家が滅んだ後、家康の計らいで江戸に暮らしていた。正之が七歳になると、見性院は秀忠の内諾を得て、信頼できる高遠二万五千石の藩主保科正光の養子にしたのである。この時、高遠藩は三万石に加増された。
 その後、秀忠の命で高遠藩主を継いだ正之は、異母兄・家光に見いだされ、幕閣に加わるようになる。しかし、秀忠との父子の対面は果たせなかった。病弱の家光は嫡男家綱の烏帽子親に正之を当て、臨終の場で亡き後の家綱のことを正之に託した。
 家綱の下で正之が行った治世は、戦国時代からの武断主義を平和な世の文治主義、法治主義に転換させることである。そのため、民生の安定に力を注いだ。この頃、浪人が溢れ、由井正雪の乱も起きている。
 正之の業績の一つは、人口増加に応じた玉川上水の開削である。前述の明暦の大火では江戸城の天守閣も焼失したが、正之は「信長以来、役に立ったためしはない」として再建に反対し、無駄な支出を防いだ。さらに過半の大名に帰国を命じ、江戸の人口を減らすことで、米価の高騰を抑えた。経済の分かった政治家だったのである。
 寛永二十年(一六四三)に家光により会津二十三万石に移封され大大名となったが、保科の姓を変えようとはせず、高遠以来の家臣を重んじた。朱子学を深く学び「足るを知る」を旨とした。松平に改姓したのは正之の六男、三代正容(まさかた)である。
 ほとんど江戸にいて幕政に携わった正之だが、藩政も高く評価されている。余剰米を備蓄する社倉の制度を設けて飢饉に備え、九十歳以上の老人には、身分にかかわらず一人分の扶持(一日に米五合)を与え、今の国民年金に匹敵する制度を作った。
 
東北に学ぶ
 明暦の大火の後、多くの焼死者が放置されたままになっているのを見た正之は、家綱に直訴し、閣老たちの合意を取り付け、遺体九千六百五十三柱を本所牛島に集め、合葬した。そこに万人塚が建てられたのが、諸宗山無縁寺回向院の始まりである。ここには十万八千の無縁仏が宗派を超えて葬られ、供養されている。
 ちなみに正之は吉田神道の流れを汲む神儒一致の吉川神道の信奉者で、吉川惟足から「土津(はにつ)霊神」との神号を得て、神道式で葬られた。墓所は猪苗代湖畔の土津神社にある。江戸時代を否定する明治政府の政策もあって、正之はそれほど知られていないが、東北には今の日本が学ぶべき多くの資産がある。

クョスコニョ    [1] 
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