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平成23年7月20日号社説 |
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耐えて咲いたなでしこJ
ドイツのフランクフルトで七月十七日、決勝戦が行われたサッカーの女子ワールドカップ(W杯)で、日本代表「なでしこジャパン」が2・2からのPK戦で米国を破り、初の世界一に輝いた。十八日早朝、奇跡の優勝のニュースは日本各地を走り、大震災被災地をはじめ全国の人たちに大きな喜びと勇気を与えた。 これまで米国には二十一敗三分けと、まだ勝ったことがない。試合は体力にまさる米国に終始押され、先制される苦しい展開。しかし、耐え続ける中で徐々になでしこらしさを発揮し、最後のPK戦では選手たちに笑顔も見え、緊張感の漂う米国を圧倒していた。恵まれない環境の中で我慢しながら好きなサッカーを続けてきた選手たちに、勝利の女神が微笑んだ瞬間だった。 世界の支援に感謝 今年の日本女子サッカーは東日本大震災や原発事故でリーグ開始が遅れ、W杯に向けての準備も大きな影響を受けた。決定戦の最後、ゴール前の体を投げ出した防御でレッドカードを受けたDFの岩清水梓選手は被災地・岩手県の出身。「こんな時期にサッカーしてもいいのだろうかと迷った時期もあったが、一人で練習を始めると、自分がどんなにサッカーを愛しているかが分かった」と言う。 準々決勝のドイツ戦で決勝点を挙げたFW丸山桂里奈選手は、二〇〇五年から〇九年まで東京電力でプレーしていた。DF鮫島彩選手は〇六年から所属してきた東電の活動休止で、W杯前に米国移籍が決まっていた。 女子サッカーはトップクラスでも契約年俸が約三百万円と、男子選手の十分の一。練習環境にも恵まれていない。そんな中で、体力と技術に勝る米国に勝つには、その本場でもまれるしかないと、主将のMF澤穂希選手はじめ多くの選手が米国やドイツに移籍し、技を磨いてきた。その成果が表れたのが今大会だった。知らないうちに彼女たちは世界の舞台で活躍していたのである。各国メディアも「当然の勝利」「決勝に出る資格がある」と報じていた。その意味では、優勝は決して奇跡ではない。 印象的だったのは、試合の後、選手たちは「To Our Friends Around the World, Thank You for Your Support(世界中の友人たちへ、サポートをありがとう)」と、東日本大震災を支援するために立ち上がった世界中のサッカー関係者とファンへ向けての感謝を書いたフラッグを掲げ、会場を一周したことだ。FIFAも公式サイトで「日本はサッカーファミリーの支援に感謝を示した」と報じ、高く評価した。 優勝候補のドイツを破った後、ドイツのメディアは、なでしこJの選手たちが礼儀正しく、喜びを控えめに表現していたことを賞賛していた。 可憐な花が愛され、江戸時代から園芸品種として盛んに栽培されてきたナデシコは、「撫でし子」に通じることから、女性や子供に例えられてきた。花のイメージに合わせて、日本女性の振る舞いが世界に知られるようになったことを喜びたい。 日本サッカー協会のシンボルマーク「八咫烏」が祭られている和歌山・那智勝浦町の熊野那智大社では十七日、地元のサッカースクールの子供たちが参列し、なでしこJの必勝祈願祭が行われたという。優勝は子供たちにも大きな夢を与えた。 共感する心 最大の勝因は、米国のワンバックが試合後、「彼女は強かった」と語っていたように大会MVPに選ばれた澤選手のリーダーシップだろう。十五歳で日本代表となって以来十八年間走り続け、五回のW杯に参加してきた。ぶれない指導力を、日本の政治家にこそ求めたい。 佐々木則夫監督は、日本人女性には仲間を思いやり共感する心があり、その女心に寄り添い生かせればすごいパワーになることから、試合前に被災地の映像を選手たちに見せ、「被災者の人たちのことを思い頑張ろう」と言って選手たちの心に火をつけたという。ナデシコの花言葉は「純愛」「勇敢」である。さあ、今度は私たちの番だ。
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