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平成23年8月5日号社説 |
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くじけない心と体を
節電の夏だが、暑さに負けない心と体をつくり、維持したい。辛亥革命百周年なので孫文のことを読んでみると、何より強靭な精神力に驚かされる。武装蜂起に十回以上失敗しながら、そのたびに不死鳥のようによみがえり、ついには革命を成功させた。彼を一番助けた日本人は宮崎滔天だが、忍耐力・持続力ではかなわない。 もっとも、革命の成功は、意外に清国軍の反乱から始まった。兵士たちも固陋な王朝に嫌気が差していたのである。その気持ちに火をつけたのがくじけない孫文の活動だった。 心の多様性を 毎年、夏になると、先の大戦を反省させるようなメディアの情報が繰り返される。戦時下、戦前の日本がいかに暗く、悲惨だったかと。しかし、少し年を重ねてみると、そんな一方的な切り口は、事実を正確に反映していないことが分かってくる。 戦時下のユダヤ人も、迫害され、無抵抗のまま死に追いやられた、とのイメージが強いが、実態はもっと多様だ。九月十日に公開されるオーストリア映画「ミケランジェロの暗号」は、ユダヤ人のしたたかさをユーモアを交え痛快に描いている。 ウィーンで画廊を営むユダヤ人のカウフマン一家には、四百年前、バチカンから盗まれたミケランジェロの名画を所有しているとの噂があった。それはムッソリーニも欲しがる国宝級の絵。ある日、一家の息子ヴィクトルは親友ルディに絵の隠し場所を教えてしまう。ナチスに傾倒していたルディは、軍で昇身するためそれを密告。一家は絵を奪われ、収容所に送られる。 ナチスはその絵を贈ることでイタリアとの同盟関係を強めようとしたが、奪った絵が贋作だと発覚する。本物の絵のありかを知る父は、息子に遺言を残しに収容所で亡くなっていた。その遺言が「暗号」なのだが、ヴィクトルはその意味が分からない。 しかし、ヴィクトルは絵を取引材料に、母を助けるためナチスと危険な駆け引きに出る。彼は母を救出できるのか。そして絵の行方は? その駆け引きが、オーストリア人らしいエスプリに満ちたもので、質の高いサスペンス・ミステリーとなっている。 映画の原作の小説の作者で脚本も書いたポール・ヘンゲ氏は、「あの当時は本当にひどい時代でした。でも人間はその時代を、ユーモアを持っていたからこそ耐えることができた。人間の生き延びる力は、ユーモアの中にあると考えています」と語っている。また、「悲しいひどい出来事ばかりを並べていては、現代の若者たちの共感を得ることはできない。むしろ、ユーモラスな提示の仕方をすることで、ああそうだったかもしれないと、当時のことを考えてもらえるようになると思う」とも。 笑いに心身の病気を治す効果のあることは、多くの実験で実証されている。人は悲惨な状況にある自分自身を笑うことで、ふと別の視点で自分を見直すことができる。それが、どうしようもない状況を相対化し、「むしろ運が良かったのではないか」と思うこともできよう。人間の心はそれだけしたたかだから、これまで人類は生き延びてきたのである。 情報化社会は、多様性を認めるようで、実は人々の思いを一面的にしてしまう危険性を持っている。客観的な報道に見えても、誰かが主観に基づいて発信していることをわきまえておく必要がある。 だから、多くの情報を集めても、最終的には釈迦の言うように「自灯明・法灯明」で生きるべきなのだ。 たくましい体 くじけないためには健康、体力も不可欠である。懐かしい言葉だが、「美しい心がたくましい体にからくも支えられる」こともあるからだ。しかも、歩くことが脳を刺激し、思考の深化を促すように、体と脳・心は密接につながっている。要は筋力と柔軟性である。 高齢社会を健康に生き、医療費や介護費の伸びを抑えるためにも、若い頃からバランスの取れた体力の増強に努め、高齢期になってはその維持を心掛けたい。情報社会・高齢社会を楽しく生きる身軽なフットワークを身に付けることだ。一人ひとりの地道で前向きな努力が、日本社会を明るく元気にしてくれるに違いない。
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