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平成23年9月5日号社説 |
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日本の歴史を学ぼう
四年に一度の教科書採択シーズンを迎え、とりわけ争点になりやすい中学社会の「歴史」「公民」について、保守系の自由社、育鵬社の教科書を採択する動きが広がりつつある。東京では都立の中高一貫校十校で中学で育鵬社の歴史、公民を、特別支援学校で自由社の公民を、横浜市では全区の中学百四十九校で育鵬社の歴史と公民を使うことを決めた。これまで現場重視の名の下、実質的には日教組に支配されてきた教科書選択が、見識ある委員により構成された教育委員会の力で、良識を取り戻しつつあるからだ。 改正教育基本法を実りあるものとするためには、こうした動きに合わせて、保護者はじめ国民一人ひとりが日本の歴史を学び直し、祖国に対する基本的な知識と誇りを身に付けることが必要であろう。そこで、市販本の育鵬社『新しい日本の歴史』を読んでみた。 人々の繋がりとして 『新しい〜』編集会議座長の伊藤隆東京大学名誉教授は、冒頭「先人の苦労を理解し、その延長線上の現在を理解すること、過去の歴史を学び、同時に歴史上を生きていく自分と家族、日本、そして世界を理解すること、それが『歴史』を学ぶということなのである」と述べている。私たちはともすれば今の考えで過去の出来事を見、判断しがちだが、その知見をもう少し広げ、連続した時代の流れとして歴史を理解し、今という時代を見直そうというのであろう。しかもそれは、抽象的な社会や出来事などではなく、具体的な個人一人ひとりの努力が積み重ねられてきたものである。 そのため、同書では五百二十四人という多くの歴史上の人物を取り上げ、「人物を通して歴史の繋がりを理解できる」(執筆者の一人で元東京都国立市教育長の石井昌浩日本教育再生機構副理事長)ことを目指している。ちなみに、登場人物が二番目に多いのは自由社版の三百五十人で、従来の東京書籍、教育出版など大手五社の教科書に比べ数の多さが対照的である。 例えば、明治の初め、静岡に隠居した徳川慶喜の護衛役だった中條景昭は、刀を捨てて農民になる決意をし、数百人の隊員と共に荒れた牧之原台地を開墾して茶を植えた。これが、静岡が日本有数のお茶の産地となった始まりである。 土木技師の八田與一は日本統治時代の台湾で、十年の歳月をかけ昭和五年(一九三〇)に東洋一の巨大ダムを完成させ、旱魃と浸水に苦しんでいた嘉南平野を台湾最大の穀倉地帯に変えた。 明治に駐日オーストリア大使の妻となったクーデンホーフ光子は、皇后から受けた「異国でも日本人の誇りを忘れないように」との言葉を胸に七人の子供を育てた。次男のリヒャルト栄次郎が今日のEU(欧州連合)の基になる構想を提唱したため、光子は「汎ヨーロッパ主義の母」と呼ばれている。 本書のもう一つの特徴は、二度の世界大戦から今日までの現代史に多くのページを割いていることである。先の大戦を日本によるアジアへの侵略戦争だとするのがいわゆる自虐史観だが、そうなる一つの原因は、十五年などの短い期間で区切って歴史を見ていることだ。少なくとも、幕末維新からの百年の流れで日本史を理解しないと、日本の敗戦にもかかわらず、戦後、どうして多くのアジア諸国が独立を果たしたのか、日本が奇跡的な戦後復興を遂げたのか理解できない。 子供と語り合う 日本の強さの第一は大震災でも発揮された国民の一体感だろう。古代史では、六四五年の大化の改新に始まり七〇一年の大宝律令でほぼ完成した国づくりにより、白村江の敗戦以来懸念されていた、中国や朝鮮からの侵略を防ぐことができた。防衛には軍事力も必要だが、それ以上に国民としての統合された意思が不可欠である。 小学校低学年の国語教科書には、因幡の白うさぎの神話も登場している。児童用に分かりやすく書き換えているが、古事記にある物語も理解した上で、子供と語り合える大人でありたい。この機会に、大人も日本史を学び直そう。
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