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平成23年10月5日号社説 |
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命と向き合う作法
九月から大谷大学教授になった前大阪大学総長で臨床哲学者の鷲田清一さんが、九月四日のNHK教育テレビ「こころの時代 私にとっての怩R・11掾vで「恂スの世話揩ニ向き合う」と題し語っていた。 臨床哲学とは、質問したりしながら相手の気持ちをはっきり言葉にしていく、いわば哲学のフィールドワーク。そこでは聴く力が大事になってくる。大きな苦難に遭遇した時、人は茫然自失となるが、やがて自分のことを語りだすとその意味を見つけていく。自分を対象化することで、現実の自分を見ているもう一人の自分を確保するからだ。それによって心が立ち直れることから、臨床哲学はカウンセリングの現場などで用いられている。 河合隼雄は「人に語らせるコツは感心することだ」と言ったという。鷲田さんは「話を聞くのは、その人に自分の時間を上げることだ」とも。今は自分の意見を言うことが優先されがちだが、人の話を聴く時間を大切にすることで新しい世界が開けてきそうだ。 コーチング 九月二十七日のNHK総合「クローズアップ現代」で「怎Rーチ揩つける社長たち」が放映された。コンサルタントは過去の事例から解決法を社長に指南するが、コーチはいろいろな質問をすることで、社長自身が解決法を見いだすように導くという。コーチを受けた社長たちは、独りよがりで、人の意見を聞かず、社員を生かしていない自分に気づき、自分が変わることで社員の意識を向上させている。ある大手飲料メーカーは、社員全員がコーチを目指すことで社風を変えていた。 コーチングは一九九〇年代のアメリカで確立された能力開発の手法で、アメリカ化された今の日本にも受け入れられつつあるようだ。 『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)を書いたマーシャル・ゴールドスミスさんは、GEはじめ巨大企業の経営者を多くコーチしてきたエグゼクティブ・コーチングの草分けで、コーチング料は一人二十五万ドルという。 彼は組織行動学に基づく「三六〇度フィードバック」の手法を駆使し、中間管理職の能力開発に実績を積んできた。ある経営者から、有能だがチームワークの悪い幹部を変えるよう依頼されたのが、コーチングの始まりだったという。 まず、リーダーの周りにいる多くの人から話を聞くことで、彼の「現在地」を明らかにする。要するに自分では気づかない悪い癖を、周りから指摘してもらうのだ。欠点は自分からは見えにくいが、人からはよく見えるもの。その上で、「それはやってはいけません」と指摘するのではなく、「その悪い癖を直すと、こんなにいいことがありますよ」と助言する。教師として教えるのではなく、親しい友人としてアドバイスするのだ。そして、彼が自ら変わろうとするのをサポートする。 彼が指摘するのは「二十の悪い癖」。極度の負けず嫌い、ひとこと付け加える、自分の判断を押し付ける、人を傷つける言葉、否定形で話を始める、情報を教えない、言い訳をする、過去にしがみつく、謝らない、人の話を聞かない、感謝しない、責任回避する、自分のことを言いすぎる……どれも上司や夫にありがちな性癖だ。 「できる人」とは、部下や取引先、友人、家族に恵まれた人だという。当たり前のことだが、目的志向の強さから独りよがりなリーダーが多い。人を大切にするとは人間関係を大事にすることで、それは上に立つ者が自分から変わっていくことが先決だという。 命を躍動させる 宗教、とりわけ教祖や宗祖のいる唱道宗教では、教えの基になった言葉が権威となって一方的に語られやすい。本来それらの多くは、釈迦やイエスが目の前の悩める人に向けて発した言葉なのだが……。 大震災を経験して、私たちは一人ひとりの命に向き合うことの大切さに気づかされた。これからは、命に向き合う作法を学び、身に付けていく必要がありそうだ。そんな人が増えれば、家庭も地域ももっと暮らしやすく、命の躍動が見られるようになる。
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