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  平成24年9月5日号社説
 

生活のなかに修行を

 先日、法華経信仰の聖地として知られる山梨県南巨摩郡の七面山(しちめんさん)に登り、身延山久遠寺の奥の院に当たる敬慎院に参拝した。
 本堂に真新しい太鼓が置かれてあり、長谷川寛清別当によると、奇跡的に津波の被害から救われた宮城県塩竈市の夫妻が、その直後の昨年四月に奉納したものだという。まだ、自らの生活再建もおぼつかないなか、まずは信仰を先立てて生きようとする東北被災者の姿に、古来より、当山で修行を重ねてきた人たちと同じ生き方を見た思いがした。それは日本人が理想とする生き方でもある。
 人が厳しい環境に自らを追いやり修行をするのは、霊性を高め、本来の自分を取り戻すためであろう。肉体的な厳しさから古来の人々の暮らしがうかがえ、そのときの気持ちから、本来の心のありようが見えてくる。生活環境がやさしくなり、精神性を高める機会が少なくなった現代こそ、生活のなかに修行を取り入れるべきではないか。
 
龍神の七面大明神
 七面山は標高千九百八十九メートルで、富士山のほぼ真西にある。そのため、春分・秋分の日には富士山頂からのご来光が拝め、古くから周りに暮らす人々の信仰の対象であり、修験者の聖地であった。平安時代に真言密教の修行寺となっていたのを、身延山に草庵を結んでいた日蓮の弟子の日朗が南部実長と共に登頂し、法華宗の寺として新たに開いたという。つまり、七面山の歴史には日本人の信仰の典型が刻まれ、受け継がれているのである。
 寺伝によると、建治三年(一二七七)、草庵近くの巨石の上で日蓮が弟子たちに教えを説いていると、どこからともなく若い女性が現れ、その群れに加わった。不審に思った弟子たちを見て、日蓮が女性に正体を見せるよう語ると、女性は龍に変わり、七面山に棲む天女であると告げ、雲に乗って七面山に飛び去ったという。
 七面山に登り、大明神を祀りたいと願いながら、それが果たせず日蓮が入滅した後、登頂した日朗と南部実長は七面大明神を祀った。山頂の敬慎院境内には龍神の棲む一之池があり、本尊は龍神の玉と鍵を手にした七面大明神である。
 その龍神は元は弁才天で厳島の弁天が勧請されたというから、ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティーが、陸と海とを渡り、七面山に到達したことになる。つまり、アジアの信仰の歴史がそこに息づいており、インドのサラスヴァティーが日本に安住の地を見いだしたとも言えよう。
 入山の前と下山の後、ふもとにある白糸の滝で水に打たれ、祈った。滝の前に立つ行者姿の女性像は徳川家康の側室・お萬の方で、それまで女人禁制であった七面山への登詣を強く願い、白糸の滝で七日間身を清めることで、それを果たしたという。法華経にはもともと女人成仏が説かれているのだが、山岳信仰の決まりから女人禁制とされていたのであろう。
 皇祖神が女性神であり、女性神の龍神を祀る寺であるのに、女性の参拝が禁じられていたのを、切なる願いで切り開いてきた女性の信仰の歴史が、ここに刻まれている。現代のフェミニズムも、その歴史を踏襲しないと、民族の心に生きる思想とはならないであろう。
 九月と十月は登詣者のピークということで、列をなして険しい道を上り下りする人の群れが見られた。彼らを接待する僧たちのにこやかで素早い身のこなしにも、すがすがしさを感じた。歯ごたえよく炊かれたご飯と、だしのよく取れた味噌汁、素材の味を生かした精進料理が、素になった五臓六腑に染み渡っていく。人と自然とはこのようにして生かし、生かされているのだ。シンプルな営みの中に、人としての生き方の基本が見える。
 
震災後の生き方
 東日本大震災は日本人が根本から生まれ変わるために、天が与えた試練と言えよう。それに耐えうるから、東北が選ばれたのかもしれないが、間違いなく日本全体が受けるべきものである。震災後の私たちには震災復興を通して、日本人の生きた歴史を残す役割があるのではないか。
 一泊二日のわずかな修行ながら、心にあった重いものが少し取れたようで、誠にありがたい体験であった。

クョスコニョ    [1] 
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