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 平成24年4月5日号[天地] |
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奈良で最初に咲く桜は氷室神社の枝垂桜。例年だと三月末には満開になるのに、四月二日に期待して訪れると、まだ三分咲きだった。佐保川の両岸に見事な桜並木が続くのだが、こちらも一分咲き。数本の若い桜が満開だったので、流れを背景に撮影した▼今回泊まったのは、一泊二千円の宿。民家を改造し、和室に二段ベッドを並べ、シャワーだけ。旅行好きで、世界を回っているうちに、家族的雰囲気で泊まれる安い宿があってもいいと思った奈良在住の男性が、昨年十一月に開いたもの。同じようなタイプの宿は普通二千五百円なのだが、きりのいい値段にしたという▼夜、茶の間に集まったのは、イギリスと台湾の男性にドイツとセルビアの女性。日本人が私一人なのは少し寂しかった。いずれも三日から一週間ほどの滞在で、いろいろ見て回っているという。日本人の駆け足観光より、じっくり町を楽しもうというのがいい▼セルビアの女性は名古屋大学の研究生で、能を研究しており、大学では日本中世史を学んでいる。一九九〇年代に民族紛争の悲劇を経験し、二〇〇六年に独立した国から、そんな女性が育ったことに感動する。日本語も堪能で、英語での会話に時々勘違いする私をフォローしてくれた。今回の奈良は、桜ではなく人に恵まれた。
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