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  平成25年2月20日号社説
 

光に向かうために

 岩手県陸前高田市の高台に鎮座し、四百人の避難所となった月山神社の宮司夫人・荒木タキ子さんは「この地域がこれほどの試練を与えられたことについては、こうした状況にあっても混乱せずに、むしろ助け合って復興に向かう姿を世界の人々に見せるために、世界に模範を示すために、神様が我々を選ばれたと思っている」と語ったという。国際教育研究所のシンポジウムで被災地の神社巡りを報告した川村一代さんの著書『光に向かって』(晶文社、二〇一二年)に書かれている。

自然を恨まず
 数多い避難所の中でも月山神社が恵まれていたのは、お婆さんたちの明るさと知恵袋があったからだ。
 お漏らしをするおじいさんたちのために、お婆さんたちはナイロンの風呂敷とタオルを使って、手製の尿取りパッドを針と糸で縫ったという。日の丸の手拭いを縫いながら、「赤くなるのは何十年ぶりだべ」「子どもが生まれるかもしんねえ」「じゃあ、今夜隣の爺さんの脇さ、寝るべ」と冗談を言い合いながら。
 大地震や津波を起こした自然を恨む言葉はなく、「だって、何したって流れていってしまったもの。笑うしかないんだよな〜」と、あきらめだけではない、女性の生命力の強さを感じさせる。
 かまどを使っての炊き出しでも、お婆さんたちの経験が生かされた。火のつけ方からおいしく炊くコツまで、知っているからだ。
 宮城県南三陸町にある上山(かみのやま)八幡宮の工藤祐允(すけよし)宮司は、「この震災を通して人として生きる真の生き方をいうものをね、教えてもらった気がします」と語る。全国の神社やボランティアの支援に「ありがたいですよね」と。最後に川村さんに語ったのは「神様に感謝することですね。あらゆるところにいる神様揩ノ感謝して生きる。私たちは生かされているんです」
 石巻市の伊去波夜和氣命(いこはやわきみこと)神社がある地域には、地震が来たら神社に寄れという言い伝えがあるという。その通り、拝殿に上がった人は助かったが、境内だけで遺体十一体が見つかった。
 同社の大國龍笙宮司は「海とともに生きてきたからこそ、地震へも津波へも恨みはない。自然の神様がやったことだから、神様への文句というのはぜんぜんないさ。……自然の力をあたり前として受け取ることができるのが、神道観だと思うし、日本人の特性かもしれないね」と語る。
 金華山黄金山神社の奥海(おくみ)睦名誉宮司は三月十一日、海が二つに割れたという。その様子を旧約聖書の出エジプト記でモーゼが紅海を渡るときのような光景だとし、マタイ伝24章16〜18節の「そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。屋上にいる者は、家からものを取り出そうとして下におりるな。畑にいるものは、上着を取りにあとにもどるな」は、津波のときの心構えを教えたものだと語っている。
 地震と津波に加え原発事故にも見舞われた福島県相馬市の相馬中村神社では、相馬野馬追神事を行うかどうか侃侃諤諤の議論が戦わされた。リードしたのは若手神職で「神事はつなげて伝えていかなければ続かなくなってしまう。どれほど規模を縮小しても、斎行すべきだ」と主張した。そして「東日本大震災復興 相馬三社野馬追」として開催されたのである。
 同社では野馬追のために飼われていた馬百頭も救済した。世話に当たった田代麻紗美禰宜は、泣き出しそうになった時も「馬たちが元気をくれた」と語っている。

当事者として
 人々の間に宗教性が残り、共同体が生きている東北だから、未曽有の災害にも耐えていられるとも言えよう。これを日本再生のための、日本人全体の貴重な体験にしていくには、さまざまな形で被災地の復興支援にかかわることが求められよう。
 第三者として被災者を支援するというのではなく、一人ひとりが当事者揩ニして向き合うことが大切になる。

クョスコニョ    [1] 
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