深刻さ増す地球温暖化
この夏、記録的な豪雨に襲われた地域が続出し、異常気象が常態化してきたかのようだった。一方で、ロシアやオーストラリアなどでは記録的な干ばつがあり、穀物栽培にダメージを与え、タイやバングラデシュなどでの大洪水なども記憶に新しい。こうした地球規模の異常気象の原因が地球温暖化にあることは、もはや疑えないようだ。 国際社会では、温暖化ガス排出をめぐる京都議定書に代わる枠組み作りの交渉が続いているが、各国が大幅削減を受け入れるめどは立っていない。このままでは、地球の気象が、いくら努力しても後戻りすることのできない、デッドラインを超えてしまうかもしれない。
省エネ・省資源社会へ 本年五月十日、米海洋大気局は、大気の標準的指標を測定しているハワイのマウナロア観測所の測定で、大気中の二酸化炭素の平均濃度が、一九五八年の観測開始から初めて四〇〇ppmの大台を超え、最高値を記録したと発表した。恒常的に四〇〇ppmを超えることになれば、地球規模の温暖化が起きた五百万〜三百万年前以来の事態に近づくという。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化の深刻な被害を避けるためには、二酸化炭素を含む温暖化ガスの濃度を四五〇ppm以下に抑えなければならないとしている。 昨年九月、北極の海氷面積が史上最少を記録した。氷が減ればそれだけ海の水が増え、ツバルやモルディブなどの島々は海面下に呑み込まれてしまう。また、水量の増加と気温の上昇は、大気中の湿気を増やし、強い上昇気流を生み出すので、集中豪雨が起こりやすくなる。 気温の上昇でシベリアのツンドラが溶けると、凍土の下に眠る動植物からメタンが発生し、温室効果でさらに気温を上昇させる恐れもある。人類のコントロールが及ばなくなる時点に到達するまで、我々に残された時間は少ない。 二酸化炭素の排出を減らすには省エネ・省資源型の経済社会を目指すしかない。しかし、経済が停滞すると国民の暮らしが脅かされるので、エネルギーや資源の消費を増やさない形での経済成長が求められている。産業界の技術革新や国民の省エネ努力などで、一九九〇年代の後半以降、わが国はそうした経済社会へと移行しつつある。 その傾向をさらに強めたのが、二〇一一年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故だった。それによって強制的な節電を強いられた国民の間で、いわゆる「賢い節電」が定着してきている。例えば、夏季の冷房温度の二八度設定や一般事務作業所の照明照度五〇〇ルクス以下などである。従来、七五〇ルクスがオフィスの標準とされていたが、紙質の向上やモニター作業の増加で、五〇〇ルクス以下でも不自由ないことが分かってきた。家庭でも、冷房や照明のほか家電製品の省エネモードなど、無理のない節電が進んでいる。 省エネ・省資源には技術革新も欠かせない。消費電力が格段に下がり、耐用年数も長くなるLEDや、二酸化炭素の排出量を半分以下にするカーボンハーフビルでは日本がトップクラスだ。ハイブリッド車やその先の電気自動車、理想の車とされる燃料電池自動車では、自動車メーカーが世界的な連合で開発に取り組んでいる。さらに、地域全体で省エネを目指すスマートシティも各地で実証実験が進み、建設されている。
人の輪づくり こうした中で興味深いのは、多くの会社が入居するテナントビルなどで、会社を超えて協議会を作り、ビル全体の省エネに取り組む例が増えていることだ。省エネを掲げての、都会のコミュニティーづくり、新しい公共の育成とも言えよう。 一方、全国の神社では、立地を生かして小水力発電を始める事例が増えている。それも、伝統的な信仰の見直しを含め、地域おこしの一環として進められている。文化と経済がリンクすることで、事業が永続化するからだ。都会でも地方でも、人々の協力の輪をつくることが鍵になっている。地球規模の課題解決も、目の前の小さな実践から始めたい。
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