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   平成25年10月05日号社説
 

式年遷宮と鎮守の森

 伊勢神宮の周りには、広大な鎮守の森「宮域林(けいいきりん)」がある。その広さは世田谷区とほぼ同じ五千五百ヘクタールで、東京ドーム千二百個に相当する。今回の式年遷宮で使われる御用材は、樹齢約二百年のヒノキが約一万本。大部分は木曽の御杣山(みそまやま)からだが、神宮宮域林からも約20%が切り出された。これは鎌倉時代以来のことで、二百年先を見据えた鎮守の森づくりが軌道に乗り始めている。
 もっとも、宮域林の多くは人の立ち入らない原生林で、命の循環が自然状態で繰り返されている。神宮の社や神事は弥生時代からの稲作を反映したものだが、式年遷宮の原型は、縄文時代からの照葉樹林の営みにあるのかもしれない。

ふるさとの森づくり
 世界的な生態学者である宮脇昭・横浜国立大学名誉教授は、「潜在自然植生」という考えから、その土地本来の木による森の再生を進め、一九七〇年代初めの新日鐵大分製鉄所での森づくりでは、近くの宇佐八幡宮の鎮守の森からイチイガシやタブノキ、シラカシ、アラカシなどのドングリを集めてポット苗を作り、移植した。二十年後には立派な環境保全林に育ち、以来、名古屋、八幡、君津などの製鉄所でも実施され、それぞれ見事な森に育っている。宮脇教授は、これを「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」と言う。植生が回復すると、本来その地にいた昆虫、鳥類、小動物も回復するのである。
 内宮神域の南に広がるのが第一宮域林で、ここでは生木は切らず、自然林として守っているので、カシノキ、タブノキ、クスノキ、シイノキ、ヤブツバキなどの照葉樹が多く、ところどころに針葉樹のスギやヒノキが生えている。
 巨木が空を覆って光が届きにくいことから、地表にはコケやシダが繁茂している。倒木はシロアリやキノコ、微生物などによって分解され、落ちた種から若木が芽を伸ばしている。様々な種類の昆虫や鳥が集まり、動物たちが生息している。このように、太陽の光を受け、水の恵みで命が循環し、木々が若返っていく姿に、日本人は自然に宿る神の力を感じてきたのだろう。それが常若の思想である。
 その南にある第二宮域林では、式年遷宮に使われるヒノキを植林し、二百年かけて育てている。自然林の一部を人工林にしているわけだが、ここでは間伐、枝打ちなど常に人の手を加え、立派な御用材になるよう手塩にかけている。
 式年遷宮が始まった千三百年前から鎌倉中期まで、御用材は宮域林から切り出していたが、やがて切り尽くされてしまう。以後、大きな木を求めて、奈良から愛知へと足を延ばし、現在は岐阜と長野にまたがる木曽の山から調達している。
 神宮が将来の御用材を宮域林からまかなう計画を立てたのは、大正十二年に起きた五十鈴川の氾濫がきっかけで、水害に強い森を育てる必要性を痛感したからだ。豊かな森にはダムのように水を貯える機能があり、大雨が降っても下流域に洪水を及ぼさない。
 戦後、急速に広まった商業林が、海外からの安い材木との競争に勝てず、荒廃していったことの反省から、近年の森づくりは、照葉樹と針葉樹を混植する、より自然に近い状態での植林に変わってきている。
 そのモデルの一つが明治神宮の森である。「百年後の自然の森」を目指して大正四年から造営工事が始まり、全国から約十本の木が奉献され、十一万人に及ぶ青年団が勤労奉仕に汗を流した。当時の大隈重信首相は、日光のような雄大なスギ林を望んでいたが、ドイツに学んだ植物学者らが、降雨が少なく関東ローム層の代々木には不向きだと説得した。その後、森はわずか半世紀で自然の状態になり、世界的に評価されている。

出雲大社でも
 今年五月には、伊勢神宮よりも古いとされる出雲大社で「平成の大遷宮」の遷座祭が行われた。御祭神の大国主命は国造りの神である。
 東日本大震災から二年後に出雲大社と伊勢神宮の御祭神が神威を高められることは、震災復興の日本にとって大きな力になるに違いない。この折に日本人としての原点を見つめ、神威にあずかれるよう努めたいと思う。

クョスコニョ    [1] 
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