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  平成25年4月5日号[天地]
   中国で理想郷のことを桃源郷というように、桃には神秘的な力があると信じられてきた。『古事記』にも、黄泉の国の醜女に追いかけられたイザナギが、桃の実を投げて難を逃れる話がある▼四月、その桃の花が一斉に開くと、甲府盆地はピンク色に染まる。数年前、「桃の花まつり」が開かれていた山梨県笛吹市を訪ねたことがある。山すそに広がる同市御坂町へと車を走らせると、広域農道沿いに広がる桃畑が満開で、甲府盆地を見下ろし、はるか南アルプスを展望することができた▼道行く人たちが息を呑んでいたのは、ひときわ赤みの濃い花桃で、実よりも花が目的だ。桃畑では、観光客を迎えながら、農家の人たちが人工受粉機で受粉の作業。大量の花粉を筒の先から噴き出すので、花粉症が大変だという▼祭りが終わると、枝に付いた花の大半を摘み取る摘花作業が始まる。実を大きくするためで、桃作りには人手がかかり、ここも高齢化が悩みだ。花を楽しみながらも、つい同情してしまった▼桃狩りは六月二十日ころからで、最近はインターネットで調べて来る若者が増えているという。桃を食べ放題味わい、お土産にして、温泉に入って帰るのが人気コース。こうした観光化が、人手不足の農業が生き残る一つの道ではある。
クョスコニョ    [1] 
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