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  平成26年9月5日号社説
 

命の教育に宗教の経験知を

 平成十六年前に小六女児同級生殺害事件が起きたのを機に、県を挙げて「命の教育」に取り組んできていた長崎県佐世保市で七月二十六日、女子高生が同級生を殺害する事件が起きたことで、教育関係者は無力感に襲われているという。加害少女が語ったという「人を殺してみたかった」は、十年前の加害女児にも共通しており、死に対する実感の希薄さが指摘されている。
 文部科学省の「私たちの道徳」を見ても、生命や大自然の素晴らしさ、自己決定の大切さをうたう反面、死については「生と死について考えよう」という短いフレーズで終わっている。死を遠ざけてきたのは何も教育界だけではなく、戦後日本社会の一貫した風潮である。今回の事件は、こうした傾向が生んだ結果なのではないだろうか。

死から生を考える
 ある教育者グループが都内の二つの小学校高学年の生徒を対象に行ったアンケート調査では、「死んだ人が生き返ることがあると思うか」の問いに対して、「あると思う」が34%、「あると思わない」が同じく34%、「分からない」が32%という驚くべき結果だった。小学校の高学年でも死を正しく認識していないものが多い。子供たちに「命を大切に」と語りかける前に、まず「死とは何か」「命とは何か」というところから伝えなければ言葉は届かないのであろう。
 「メメント・モリ」(死を想え)という言葉があるが、死を想う、具体的には死者のことを想うことで、人間は心を発達させてきたとされる。イラクで発見された最古の人骨に花粉が付着していたことから、死者を悼む気持ちのあったことが推測され、そこに宗教心の芽生えが見られる。そして、考古学者のスティーブン・ミズンは、人間が今のような心を持つようになったのは、約二千五百年前のことだとしている。東西で世界的な思想が出現した、ヤスパースの言う枢軸時代である。
 これは、個人的な経験からでも分かることで、人は死を考えることで生に目覚めていく。死を通して生を考える教育の会会長の中村博志日本女子大名誉教授が、講座でデス・エデュケーション(死の準備教育)を行ったところ、学生の多くが周りの人たちを大切にし、家族との会話が増えたなどの感想文を寄せたという。
 ところが、宗教を個人の内面の問題と限定し、生の価値を最大限に発揮させることを目指す近代社会において、死は次第に遠ざけられるようになった。とりわけ、死は忌むべき穢れとしてきた日本では、死について語ることがタブーとされ、戦後の個人主義化と相まって、ますますその傾向を強めているのである。
 これに拍車をかけたのが核家族化、少子高齢化という家族形態の変化で、子供たちは身近な人の死を体験する機会が減ってしまっている。人生の最後においても、自宅死を望む人が80%以上なのに、実際には10%しか希望がかなえられていない。
 発生以来、人の死にかかわり、心を発達させてきた宗教は、各地の風土や民族性に応じて様々な文化を形成してきた。日本で仏教的な臨終儀礼が成立したのは平安時代末期のことだという。宗教はそれぞれ長い歳月をかけ、死との向き合い方を鍛えてきたのである。
 今、道徳教育の教科化が課題になっている。教育基本法第十五条(宗教教育)では「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。」とされているが、 多くの学校ではいわゆる宗教教育に消極的である。そのため、死をめぐる宗教の経験知もほとんど生かされていない。

心に届くには
 命の教育は生の教育と共に死の教育を車の両輪として行われるべきものだろう。それが片方だけだと、同じところをぐるぐる回りすることになってしまう。
 宗教においては、死の経験知があるとはいっても、それがドグマとして語られては、人々の心に届かない。さらに、死の感性は一人ひとりが自ら深めるものであり、一方的に教わるものではない。その点に留意しながら、宗教からの発信を期待するものである。

クョスコニョ    [1] 
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