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  平成26年10月5日号社説
 

ふるさと創生への思想を

 九月二十九日の衆参両院本会議での所信表明演説で安倍晋三首相は、今国会を「地方創生国会」と位置付け、地方の若者が夢や希望を持てるよう、地域活性化や人口減少克服の大胆な政策を取りまとめ実行すると表明し、「ふるさとを消滅させてはならない。もはや時間の猶予はない」と強調した。
 「天国はいらない、ふるさとを与えよ」はロシアの農村詩人セルゲイ・エセーニンの言葉である。ロシア革命に希望を抱きながら、その現実に失望した彼の詩は、ソ連政府で数十年にわたり発禁処分を受けてきた。国の発展とふるさとの共存は、グローバル時代における地方創生の普遍的なテーマなのである。

地方消滅の危機
 二〇四〇年には、全国の約50%に当たる八百九十六の市区町村が、二十〜三十代の女性の流出により「消滅」の危機に直面するという試算を発表した、日本創成会議座長の増田寛也元総務相は、限られた資産を地方の拠点都市に集中投資して、人口減少の防波堤を築くべきだと提言している。
 シャッター通りに廃校、空き家の増加など、地方では人口減少が実感される。その意味で、地方消滅は二十五年後ではなく、今の問題なのである。地方にとって深刻なのは若者の流出で、バブル崩壊後の一九九〇年代に見られた地方回帰が減り、二〇〇〇年からは東京圏への流入が増えているという。
 日本創成会議の報告は二〇一〇年の国勢調査を基にしており、東日本大震災の影響は盛り込まれていない。急速な人口流出に見舞われる中、復興計画を進めている被災地は、いわば日本の近未来を先取りしていると言えよう。コンパクトシティー化などは共通したテーマだが、どんな町にするかは住民によって考えが異なる。それを一つの絵にまとめ上げていくには、何より政治的リーダーシップが必要であろう。
 内閣府の発表によると、東京在住者で地方移住したい人の割合が40%超もいる。東京の出生率は1・09で、東京は地方に比べ、働きながら子供を育てるのが困難な環境だからだろう。つまり、子供を持つだけの収入のある仕事が地方にあれば、東京に出なくてもいいという若者は多いのである。
 高度経済成長期の日本では、地方が大都市圏への人材供給源になっていた。ところが今、そのプールが枯れようとしている。その結果、耕作放棄地が滋賀県ほどの規模になり、国土の七割を占める山が荒れている。いずれも、農林業の収益性の低さから、後継者が減り続けているのである。
 これは経済のグローバル化の結果であり、半面、日本はその恩恵を受けて発展してきたのだから、グローバル経済のなかでのローカル経済を育て、地方での暮らしを可能にしていくことを、国家全体の戦略として進める必要がある。地方にあって世界を相手に仕事をしている会社も少なくない。観光などはローカルの良さを生かすことが、世界から多くの人を呼び込むことにつながる。
 東日本大震災の被災地を訪れて印象的だったのは、祭りや伝統芸能が人々の心を元気にしていたことである。ふるさと創生も、基本となるのは住民の気持ちであるから、その心を育てるような取り組みも必要であろう。

生き方を問い直す
 人間にとってふるさととは生まれ育った原点であり、アイデンティティーの問題である。古代から、稲作を中心に暮らしを形成してきた日本人には、土から生まれ土に帰るような思想があり、武士は一所懸命の勤労観を発展させた。どこかに理想郷を求めるのではなく、今ここで真面目に生きることを大事にしたのである。そうした土台があったから、近代化にも成功したのではないか。
 もちろん、学問や技術を学ぶために旅に出ることも必要で、どこに住むかは本人の自由なのだが、問題はふるさとがあるかどうかだろう。地方消滅という危機の時代に、日本人の生き方そのものが問われているように思う。

クョスコニョ    [1] 
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