新文化創建時代の先駆者たれ 利己主義から利他主義へ
本紙代表 前田外治
明けましておめでとうございます。 皆様方には日頃よりの御愛読に心から感謝を申し上げるとともに、平成二十年の節目を迎え、喜びと希望をもってご挨拶を申し上げます。 昨年を振り返れば、宗派教派を問わず、国内外で活躍する宗教指導者をはじめとする諸先生方を訪ねて意見を伺い、あるいは取材を通して、各教団、諸団体の誠実な活動を見るにつけ、溶けゆく日本を食い止め、かつ再生させようと孤軍奮闘される、堅実なお働きがあることを知って勇気づけられた次第です。 しかし一方で、社会においてはますます極悪非道の罪が満ち溢れるような有様で、良心はどこにあるのかと思えるほど、悲惨な事件や現象があらわになった年でもあります。 昨年の「今年の一文字」は「偽」でした。多くの偽装、偽造問題が発覚し、今まで隠されていた偽りが一挙に白日の下にさらされ、いろいろな信用が崩れ去ることになりました。 以前に「これからは真実顕現時代に入る」と書いたことがありましたが、まさにその通りになってきたと思わざるを得ません。 二十一世紀を「宗教の時代」と心ある人々が予言したのは、ほかでもない欲望に任せた利己主義の時代が終わりを告げ、他のために生きようとする「利他主義」の時代が来なければ人類は生き延びられない、と直感していたが故だったのではないでしょうか。 企業でも、社会に奉仕したいという創業者の意志を受け継いでいるところは栄え、金銭がすべてと自己の利益ばかりを追求してきた企業は、一時的に成功したかのように見えても、やがて淘汰された事実を数多く目撃してきました。 利他主義こそ、生きとし生けるものすべてが守らなければならない宇宙の原理原則(公理)であり、人間もそれを外れては生きていけないことを、そろそろ悟らなければならない時代が来ているのではないでしょうか。 ボランティア活動で汗を流している人々の喜びの声を聞くとき、隣人同士が助け合って生きていた、かつての日本の姿がまだ息づいている希望を感じます。ボランティアで得た喜びは、他のために生きた本心の喜びであり、人間にとって何ものにも代えがたい喜びなのだと思わざるを得ません。 新文化とは利他主義の文化のことであり、それは宗派教派を問わず、いかなる人々にも理解できる宇宙の原理原則ではないでしょうか、私たちが目指さなければならないものは、この宇宙の大原則にのっとった、利他主義の生き方を実践することと言えるでしょう。 自己中心的な欲望が跋扈する利己主義の時代を過ぎ去らせ、他者をいたわり、親子兄弟として慈しむ、利他主義を中心とする本来の「家族文化」へと前進する時が今であります。 すでにそうした生き方を実践してこられた宗教者の方々こそが先駆者となって、人々に意識の変革を促す役割を果たしていくことが願われています。国民を啓蒙していくそのうねりが、日本から世界に向かって発信されるとき、まさしく日本が人類救済の指導国となっていくでしょう。その可能性を十分持ったこの国であることを、私は確信しております。 他のために生きる利他主義の新文化創建時代の先駆者として、皆様方のご活躍を切に祈りながら、年頭のご挨拶といたします。・
年頭のご挨拶
神社本庁総長 矢田部正巳
平成二十年の初春を迎へ、先づ以て竹の園生の御栄へを寿ぎつつ、謹んで新年を賀し奉ります。 畏くも、天皇陛下におかせられましては、愈々、日々御公務に精励遊ばされてをりますことは、慶賀に堪へないところでございます。改めて大御代の弥栄を寿ぎ奉る次第であります。 私どもが本宗と仰ぐ伊勢の神宮では、平成二十五年斎行の第六十二回神宮式年遷宮に向けて、諸祭・諸行事をはじめ、その御準備が粛々と進められてをります。千三百年の歴史を有する御遷宮が、古式に則り厳粛に斎行されるやう、国民総奉賛の気運を昂めて参りたいと存じます。皆様方の一層の御理解御協力の程をお願ひ申上げます。 さて、昨今の世相は、情報化・国際化の進展が目覚しく、国家や地域を越えた交流が活発化する一方で、美しい国柄の根幹を成してきた日本人の伝統的価値観や共同体意識が薄れ、洵に憂慮に堪へない状況にあります。 かかる時代にこそ、私どもは一層心を引き締め、鎮守の杜を中心に、祭祀の厳修と神社神道の興隆に努め、先人諸賢が営々として築き上げて来た日本人の価値観や道徳意識を次代に継承すべく、力を尽して参らねばならないものと存じます。 終りに、皆様方の益々の御健勝と御多幸とをお祈り申上げ、新年の御挨拶と致します。
ごあいさつ
総本山身延山久遠寺法主 内野日総
新年を言祝ぎ申し上げます。 身延山では百三十年ぶりに復元される五重塔の工事も順調に進み、いよいよ三月半ばには上棟式を挙げる運びとなります。落成式は明年になりますが、待望の五重塔が完成すれば、七堂伽藍が立派に調い、総本山としての景観もいっそう深まるでしょう。 この五重塔は世界平和のシンボルとして、世界に向かって平等大慧の法華経の教えを発信する基地にしたいというのが私の願いです。 み仏の教えは究極のところ、この世の浄土化であります。宗祖日蓮聖人の「立正安国」の理念も同じであります。戦争のない世の中をこの世に実現したい、これが仏教徒の願いであり、戦後の一貫した本宗の信仰目的であります。すなわち全世界の成仏を理想として信仰運動を進めてまいりました。 日蓮宗は一昨年以来、宗門あげて「立正安国・お題目結縁運動」を展開しております。この運動は全宗徒の信仰を、宗祖の願行「立正安国」の実現に向かって、多くの人にお題目の縁を結んで行おうというものです。その具体的行動に、まず身延山の日蓮聖人に全宗徒がお目にかかり、その決意のほどを申し上げる祖山総登詣を実施いたして居ります。 五重塔の完成を期しつつ、全国から身延山を目指して上ってくる檀信徒の受け入れで、今年は多忙な一年になることでしょう。自他幸甚。
<7面>
- 国際宗教研究所公開シンポ
宗教界の宗教教育支援問う
- 東京ボーズコレクション
仏教の香り求め1万人集う
- 中東和平イニシアチブ
広がる宗教間対話 エルサレム
<8面>
- 200年後の森を育てる
寺社建築講演会で強調 龍谷学会
- ユダヤ会堂で「光の祭り」祝う
新駐日イスラエル大使を歓迎
- 狛ネズミのある大豊神社
勤勉、多産にあやかる 京都
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