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  平成19年2月5日号社説
 

共感し合える社会に

 秋川雅史のCD『千の風になって』が、地味な歌なのにベストセラーになっている。「私のお墓の前で 泣かないでください/そこに私はいません 眠ってなんかいません/千の風に/千の風になって/あの大きな空を/吹きわたっています」という米国生まれの詩は作者不詳。亡くなった大切な人をいつも感じていることが大事だという意味で、別にお墓がいらないと言っているのではない。実体がない人をどうやって感じるのか。でも今は、その共感する心が大事なのだと思う。
 
 孤立が自殺を増やす
 平成十年に自殺死亡者が年間三万人を超え、景気が回復しつつあるが、その数は減少に転じていない。昨年六月、自殺対策基本法が成立し、政府は自治体や事業主に、国などと連携して地域や職場で自殺防止の対策を進めるよう求めている。
 自殺願望者からの電話を受けることで防止活動を行っている東京自殺防止センターの今村和男理事長によると、相談員は相手の話をともかく傾聴することに努めるという。電話をしてくるのは、その人に「死にたくない」という気持ちがあるからだ。そして、「自分の苦しみを誰かに話しておきたい」と思っている。
 厚生労働省によると、平成十六年における人口十万人当たりの自殺死亡者数は、上位から秋田39・1、青森38・3、岩手34・6、島根32・0、高知32・0、宮崎31・8人で、下位からは岡山19・0、徳島19・4、香川19・7、神奈川19・9、滋賀20・0人。
 秋田県では、孤立し、対話の少ないのが自殺の最大の原因だという。昔は若者たちが雪降ろしをしながら交流していたが、今は老人ばかり残され、雪降ろしは業者任せで、近所付き合いも減った。孤独な老人が病気になるとあきらめやすい。温暖な宮崎が高いのは、やはり若者が少ないからで、老人の状況は秋田と似ている。自殺率が低い地域は若者が多く、孤独な老人が少ない。京都や奈良、宮城、石川、大阪など歴史のある地域も同じだ。
 今村さんが自殺防止の活動をしようと思ったきっかけは、一九八〇年代半ばに勤務していたつくば市で、研究者の自殺の多さに遭遇したこと。研究者は狭い分野の研究ばかりで周りと相談することが少なかった。行き詰ると自分の限界を感じ、自殺に走る。つくばの公務員宿舎は書斎が付いているため、研究者は家庭でも書斎にこもり、家族との対話が少ない。家族も自殺の原因が思い当たらないという孤立し孤独な状況があったという。
 また、今村さんが北陸の大学にいたとき、学生の一人がオートバイでダンプカーに衝突する事故を起こし、亡くなった。大学の体育館で葬儀をが営まれ、両親と妹が遺体に抱きつき、泣き濡れているのを見て、人が死ぬと周りの人がこれほど悲しむことを学生たちは知った。その後、大半の学生が暴走行為をやめたことから、やはり人の死は見ないと分からないと感じたという。そういう意味では、子供たちに、身近な人や生き物の死を通して命を大切さを教えることは、自殺防止の源流といえよう。
 
 生きる意味を
 人間は一人では生きていけないのに、一人になりたがる。そんなアンビバレントな気持ちは、死ぬまでなくならないだろう。しかも市場経済の社会は、個人の欲望を認めるのが大前提。つまり、個人が好き勝手に生きられるようにつくられ、変えられ続けている。私たちはそれを肝に銘じながら、それでも共感し合える関係を築いていかなければならない。それこそが私たちに生きる意味を与えてくれるからだ。
 自殺防止センターでは、電話を掛けてくる人に「死んではいけない」とは言わないよう定めている。相手と信頼関係をつくり、最終的には本人の意思を尊重するとの考えからだ。世界各国での経験から、受け答えの基本が決まっている。しかし、「死ぬな」とはっきり言えないのが、クリスチャンである今村さんの個人的な悩みだという。共感関係のつくり方について学ぶべきことは、まだまだ多いようだ。

クョスコニョ    [1] 
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